ドイツ・ファンタスティック街道と南仏の美しい村を訪ねて 
Fantastic Road in southwest Germany & the beautiful villages in French Riviera
8.ヴァンスのロザリオ礼拝堂(Chapelle du Rosaire)とトゥーレット・シュール・ルー(Tourettes-sur-Loup)

コート・ダ・ジュールの山側に点在する"鷲の巣村"といわれる南仏の小さな 村々を訪ねる旅は、今回はさらに奥に入っていきます。

サン・ポール・ド・ヴァンスからさらに北上すると、鷲の巣村でもやや大きな ヴァンス(Vence)という街があります。

Vence
http://www.vence.fr/-Home-.html

この街もまた、芸術家に愛された街。 Dufy、Matisse、Chagall、Dubuffet、 Carzou、 Arman、 Anthony Mars、 D.H. Lawrence、などの画家や小説家、詩人などが人生の一時期を過ごした街として知られています。

しかし、なんといってもこの街の名を世界的に有名にしたのは、マティス(Henri Matisse)が晩年の71歳から4年の歳月をかけて、ドメニコ修道会のために創ったロザリオ礼拝堂(Chapelle du Rosaire)。

Chapelle du Rosaire
http://pagesperso-orange.fr/maison.lacordaire/

マティス自身が、傑作であり、真理を追求するためにささげた人生の到達点であると語る礼拝堂は必見です。

ヴァンスの街の広場に駐車して、礼拝堂に向かうつもりが、ヴァンスの旧市街は、 マルシェ(市場)がたっていたため大渋滞。マルシェもまた、ヴァンスの名物。フレッシュな野菜や果物、パンや海産物などさまざまな地場の食材、香水やアロマ、布製品など南仏の特産品が出品されることで近隣では有名だそう。マルシェにも惹かれたのですが、とりあえず見学の終了時間が迫っていたため、迷いながら礼拝堂に直行します。

ロザリオ礼拝堂は、ヴァンスの旧市街に対面するように、ゆるやかな坂道の途中に、建てられています。ブルーと白でデザインされた屋根には、モダンなデザインの鉄の十字架が聳え、控えめなシンボルに。

運よく礼拝堂の前に駐車でき、閉門するところだったシスターにお願いして、なんとか見学者の列にいれていただきました。簡素なエントランスの扉の上には、マティス独特の、黒の輪郭線だけで描かれた白いタイルの装飾。

狭い階段を降りていくと、礼拝堂があります。
深いブルー、イエロー、明るいグリーンの3色のみの、有機的なデザインのステンドグラスから光が差し込む礼拝堂は、さわやかな明るさに満ち溢れています。

白い壁面には、聖書からとったモティーフのタイル絵が。
石造りの祭壇、燭台、十字架像、書見台など、この礼拝堂のすべてがマティスのデザインです。さらに多数の斬新なデザインの上祭服(ミサの時の司祭の上衣)も展示されています。

まさにマティスの芸術の集大成。彼の祈り、平和と安らぎが感じられる礼拝堂です。

こちらの礼拝堂の見学は曜日と時間が限られていますので、お出かけの際は、 予め上記修道院のホームページで確認して、お見逃しのないように。


トゥーレット・シュール・ルー(Tourettes-sur-Loup)

ヴァンスから5キロほど西に向かった地域に、”すみれの町”といわれる鷲の巣村があります。フランスで唯一スミレを栽培している土地です。

トゥーレット・シュール・ルー
http://www.tourrettessurloup.com/

中世に高い断崖の上に築かれた家々は、何世紀もの間ひっそりと生き延びてきました。 20世紀初頭以来、この街には、音楽家、アーティスト、作家、詩人が集まり、今では、コートダジュールのアート&クラフトセンターの一つとなっているそうです。

14世紀に創建されたという教会の前の広場は、現在でも住民の憩いの場です。 この辺りで残存する珍しい教会建築。何回もの増改築を経て現在の姿に。

Eglise Saint Gre'goire

12世紀ごろから存在する村の塔は、村への入り口ともなっていて、物見やぐらや時計台としても機能してきた珍しい建物。

Beffroi (XIIe - XIVe -XVIIe )

13世紀に歴史が始るお城は、現在は市庁舎として使われています。お城の前の広場には 噴水が。

Chateau 前広場

村の大通り(Grand Rue)で。観光用かプライベートかわかりませんが、引き馬が通ったり、村の主のような犬が寝そべっていたり。なんとも、のどかな風景に遭遇。

Grand Rue

大通りを進むとほぼ中間地点に見晴らし台があります。

そして、そろそろのどが渇いてきたと思う地点に”TOM'S ICE CREAM”という ホームメードアイスクリームのお店が。
色とりどり、30種類のフレーバーをそろえているとか。
ジャスミン、バラなどのなかから、迷わずスミレをチョイス。
ヴァイオレットのアイスクリームの中には、本当にスミレの花が入っています。
珍しいスミレの砂糖漬けは、お土産に。

TOM'S ICE CREAM

スミレの町というだけでなく、この村には、アクセサリーや陶芸、彫刻など、フランス語で職人とか芸術的職人を意味するアルティザンの工房やギャラリーも点在しています。LaBergerie はスミレの花ををモチーフにした陶器を作っているアトリエ兼ギャラリー。マダムと息子さんが仲良く制作販売。

La Bergerie
http://www.vigroux.com/

鷲の巣村の建物の構造を露にした店内には、かわいいスミレの花の絵付け陶器がところせましと並べられています。記念に小さい器を購入すると、「それは、息子の絵付けよ」と。 なんとも素敵なファミリーのお店でした。

La Bergerie

トゥーレット・シュール・ルーの遠景は、鷲の巣村の一典型として美しい景観を保っています。

ルー渓谷には、岩盤に張り付いたような、名も知れない鷲の巣村がいくつも存在しています。 中世の面影が残った村では今も人々の生活が変わらず営まれているのでしょう。