My Favorite Travels And Places
(私の好きな旅と場所)

38.常夏の楽園いやしの風が吹くハワイ
その2. キラウエア火山とそこに住む伝説の火の女神ペレ

【はじめに】

今回は、ハワイ島のキラウエア火山(Kilauea Volcano:1274m)とそこに住む伝説の火の女神 ぺレ(Goddess Pele)を訪ねます。
キラウエア火山は、世界の中でも最も活発に活動を続ける火山の一つです。

そして幾つかある火口のうちのハレマウマ火口(Halemaumau Crater)は、先住民の聖地.聖域とされ火の女神ペレが住むと言われています



<グリーンサンドビーチの位置図>



【キラウエア火山】

1961年にキラウエア火山と隣接するマウナ.ロア火山(Mauna Loa Volcano:4165m)一帯322.4kuは、ハワイ火山国立公園(Hawaii Volcanoes National Park)に制定され、1987年には世界遺産(自然遺産)に登録もされています。
(ハワイ火山国立公園は、1916年にマウイ島のハレアカラ火山と共にハワイ国立公園として制定されますが、1961年にハワイ火山国立公園とハレアカラ国立公園とに分離制定されています)

又、ハワイ火山国立公園と繋がるカハウアレア自然保護区(Kahaualea Natulal Area Reserve)やカパパラ森林保護区(Kapapala Forest Reserve)をはじめとする自然豊かで多様性を持つこれら地域は、ユネスコ(UNESCO)により1980年に世界生物圏保護区に指定を受けてもいます。

古来からハワイ語でキラウエアは、「噴出す」ことを意味する聖地聖域として崇められてきています。

そのキラウエア火山は、20世紀に45回の大きな噴火が記録され1983年1月の大噴火に始まるプウオオ火口(Puuoo Crater)と周辺のクパイアナハ火口(Kupaiana Crater).ナパウ火口(Napau Crater)からの溶岩の噴出が現在も続いています。

溶岩の噴出地点と噴出量には偏在がありますが、19-49万立法メートル/日が観測されています。

溶岩の噴出と流出により1987年には、海岸沿いの137号線が埋まり1988年には、ワハウラ.ビジターセンター(Wahaula Visitor Center)が1990年にはカラパナ(Kalapana)の町が、1994年には黒砂浜の美しいカモアモア.ビーチ(Kamoamoa Beach)と古来からハワイの人々の聖域.聖地とされるワハウラ.ヘイアウ(Waha'ula Heiau)が溶岩で埋没してしまっています。

しかし、このような活発な火山活動を見る一方、噴出する溶岩が極めて粘性が高く、ゆっくりと流れ移動することから比較的安全な火山とされています。

そしてハワイ火山国立公園は、アメリカ内務省国立公園局(NPS)により厳格な管理がされ、ハワイ火山観測所(HVO)などからの的確な情報の提供と、あわせ観光施設も整備がされていることから人気の高い観光地となっています。

主な観光地と観察施設に次の施設が上げられます。

・キラウエア.ビジターセンター(Kilauea Visitor Center)
アメリカ国立公園局により運営され、資料.情報.記録映画の上映.展示等によりキラウエア火山を総合的.立体的に案内するビジターセンターとなっています。

・トーマス.ジャガー博物館(Thomas Jagger Museum)
アメリカの火山学者で1912年ハワイ火山観測所を創設したトーマス.A.ジャガー博士(Thomas Augustus Jaggar:1871-1953年)にちなみ1987年にキラウエア火山ハレマウマウ火口を望む展望台と一体となり建設されています。
又、現在アメリカ地質調査所(USGS)が運営を引き継ぐ火山観測所とも隣接し、溶岩の標本やジオラマに記録映画.記録写真に観測機器などを展示する博物館とし開設されています。

・ハレマウマ火口(Halemaumau Crater)
キラウエア.カルデラ(Kilauea Caldera:約3x4q・外周約17.7q・深さ約130m)内に現在も噴煙をあげる直径約900mの火口の一つで、火の女神ペレが住むハワイ先住民の聖地.聖域とされています。

<サウスポイントの海岸(アメリカ最南端の岬))>



・サーストーン溶岩トンネル(Thuston Lava Tube)
ハワイ火山国立公園北東のスピリチュアル.スポット(Spitial Spot:精神的な癒しの場)とされる谷間の溶岩トンネルで、噴出した溶岩の外側が外気により冷却され固まり、内側の冷却されならない溶岩が流出し生まれた空洞部からなっています。

谷間には、ハワイの固有種でワラビの仲間であるハワイアン木性羊歯(Cibotium splendens : Hawaiian Tree Fern)やオヒア(Metrosideros polymorpha)が繁茂し、ミツスイ鳥(Vestiaria coccinea)やアパパネ(Himatione sanguinea)などが自生.生息する神秘的な熱帯の樹林となっています。

<マウ・ナロ南端の景観>



・ボルケーノ.ハウス(Volcano House)
1864年に建設されたハワイ火山国立公園内隋一の宿泊施設でキラウエア.カルデラやハレマウマウ火口が展望でき、かつて小説家のマーク.トウェイン(Mark Twain:1882-1945年)やルーズベルト大統領(Franklin Roosevelt:1882-1945年)などの著名人が訪れ宿泊もしています。
又、1895-1960年までオーナーであったジョージ.ライカーガス(George Lycurgus:1858-1960年)は、亡くなるまでこの地に住み火山の噴火がおこると好物のジン(Jin:蒸留液)を火口に投げ入れたとも捧げたとも言われ、今日も彼に習って火口に住む火の女神ペレに人々がジンを捧げています。

・道路網
キラウエア火山周辺は、観光と万一の噴火に備えての避難路としての道路網が整備されています。

ヒロ(Hilo)からコナ(Kona)に抜ける11号がキラウエア火山の北側を走り、カルデラから海岸に至る約32qの火山観光道路のチェーン・オブ・クレーターズロード(Chain of Craters Road)が整備されています。
又241qに及ぶいくつものトレイルコースコース(Trail Running Course)やハイキング.コース(Hiking Course)も整備されています。

キラウエア火山は、地球の鼓動が伝わってくる魅力に加え、熱帯が生み出す多様な自然の魅力にもあふれています。

【火の女神ペレ】

火の女神として現在もハワイの人々に恐れられつつも、尊敬されるペレの伝説が語りつがれています。

そして、キラウエア火山のハレマウマ火口に宿り続けていると信じられています。

火の女神ペレは、大地の女神ハウメア(Haumea)と天の神カネホアラニ(Kanehoalani)の子供としてポリネシアのタヒチに生まれ、水(海)の神とされるナマカオカハイ(Namakaokahai)をはじめとする多くの姉妹や兄弟と育ちます。

そしてタヒチから海を渡りハワイ諸島のニイハウ島へ、そこから島々を渡りハワイ島へとたどり着き安住の地とします。

火の女神ペレの伝説は、神々のハワイへの移住とともに始まり、旅路での出来事や島での生活を通し語りつがれています。

その伝説の多くは、恋や愛に嫉妬や憎悪、善と悪との心の葛藤、両親との対立や兄弟喧嘩、領有地争いや権力闘争と、まさに日常的な私達人間の生活の疑似抽写であるように思えます。

火の女神ペレがキラウエアに住むこととなった伝説のいくつかをご紹介します。

・姉で水(海)の女神ナマカオカハイとの争い
火の女神ペレが造ったいくつもの火口を、姉の水(海)の女神ナマカオカハイがたびたび水をかけたり水没させてしまったことでマウイ島ハナで二神が戦うことになります。
敗北した火の女神ペレがハワイ島に逃れキラウエア火山のハレマウマウ火口を安住の地としたとされたと言われています。

・雪の女神ポリアフ(Poliahu)との争い
ハワイ島のマウナロアに住む美人の雪の女神ポリアフが、火の女神ペレの流す溶岩を雪で冷してしまうため、嫉妬と怒りで火山を噴火させると言われています。
火の女神ペレは、敗北しキラウエア火山に逃げ帰ることになったと云われています。

・火の女神ペレの恋
火の女神ペレは、若くハンサムな男性オヒア(Ohia)に恋をします。
しかし、オヒアにはレフア(Lehua)と云う恋人がいたため火の女神ペレを拒絶したことにペレが怒り、オヒアを木に変えてしまいます。

木にされた恋人オヒアをこがれるレフアは、悲しみのあまり雨を降らせると云います。

悲しむレフアを見かねた神々が、オヒアの木にレフアの赤い花をさかせ、二人が寄りそうように一本の木とその木に咲く花としたと云われています。 
溶岩の真黒な火口の上に咲くオヒアの木とレフアの花に周辺の溶岩を観光客が持ち帰ると、火の女神ペレが怒りと嫉妬で噴火が繰り返されると云われています。

<イエロー・イリマ>



<プウ・オ・マハナ(噴石丘)とグリーンサンドビーチ)>



<オリビン(ぺリビット)の砂浜>



【自然―歴史―伝説】

火の女神ペレの激しいばかりの性格は、キラウエア火山そのものと言えます。

火の女神ペレにまつわる伝説には、人々の力のおよばない自然に対する驚異と感謝の念に、生活を通じてのさまざまな出来事が重ねられて生まれてきたようにも思えます。

そして、ポリネシアの人々が、安住の地を求めてポルネシア語で「神の宿る島」を意味するハワイへ渡ってきた歴史的背景とも呼応しているかのようでもあります。

「神の宿る島」ハワイは、私の好きな場所でもあります。

そして、今も火の女神ペレにジンや魔除けの葉で編んだティー・リーフ(Ti Leaf)にプルメリアの花が捧げるキラウエア火山を訪ねる旅は、私の好きな旅でもあります。


【参考図書・引用文献】

・在ホノルル日本国総領事館(Consulate General of Japan at Honolulu)
:ハワイ州統計要覧(2012年)
・アメリカ大使館資料情報室資料(Hawaii 2011年)
・アメリカ内務省国立公園局資料(Hawaii 2011年)
・アメリカ地質研究所.ハワイキラウエア火山記録及び資料(2011年)
・トーマス.ジャガー博物館資料(2012年)








【作者プロフィール】
相馬正弘(そうままさひろ)
・京都市出身
・設計事務所を開設し、地域計画.都市計画.公園計画を中心に活動中
・大学の講師として後進の指導も
・趣味は、旅行.テニス

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ケータイ・サプリwebマガジンのための書き下ろしです。
使用されている写真の著作権は相馬正弘さんと記載されている方にあります。