アート&カルチャー


第90回 清春芸術村
KIYOHARU ART COLONY
(山梨県北杜市)

都会はまだまだ残暑が続いていますが、高原には秋風がたち、稲穂が揺れトンボが舞う秋の風情が漂いはじめました。

実りの秋、芸術の秋、豊かな秋を一足早く満喫できるのも高原の美術館の魅力!

なかでも今回ご紹介する清春芸術村は、北に雄大な八ヶ岳、西に甲斐駒ケ岳をはじめとする南アルプス、遠くに富士山を望むことのできる山梨県北杜市の景勝の地に展開する複合アート施設です。

清春芸術村
http://www.kiyoharu-art.com

広大な敷地は、旧清春小学校の跡地。1925年(大正14年)に旧清春小学校の校舎落成記念として植えられた桜の老木に囲まれています。この桜群は、山梨県指定天然記念物にもなっていて、桜の名所として知られている地でもあります。

さて、清春芸術村誕生の発端は、1977年に吉井画廊社長(当時)の吉井長三氏が小林秀雄、今日出海、白州正子、東山魁夷夫妻、谷口吉郎、正田英三郎等と桜の季節にこの地を訪れこの地の美しさに魅せられたことだとか。

吉井氏は、1980年、アトリエ清春荘をかわきりに、芸術家の育成を目的とするユニークな集合アトリエ(ラ・リューシュ)、次いで、白樺派同人による美術館構想を基にした清春白樺美術館、そして、ルオー礼拝堂を順次建設・開館します。

その後、この地には、佐々木喬氏設計の白樺図書館も建設され、梅原龍三郎のアトリエ、小林勇の旧居「冬青庵」が移築、さらに藤森照信氏が設計したユニークな茶室「徹」が建設されました。

2011年には清春芸術村開村30周年を記念して安藤忠雄氏デザインの光の美術館も開館し、多様なアートと建築が楽しめる場となりました。

早速訪問してきましたので、ご紹介しましょう。

清春芸術村までの東京、名古屋からの車でのアクセスは、中央高速・長坂インターチェンジより8分となっています。

(電車では東京方面から、JR中央本線で長坂駅下車タクシーまたは、バスで10分。 名古屋方面をからは、JR中央本線で小淵沢駅下車タクシーまたは、バスで10分)

インターを降りたらR32で長坂方面へ。JRの線路を越えたらR606を進むと、 田園地帯の右手前方高台に芸術村のシンボル的建物、ラ・リューシュの特徴あるシルエットが見えてきます。

道なりに進み、三叉路を右折すると左手に清春芸術村の正門が現れます。

趣のある正門の両側に掛かる「清春藝術村」と「清春白樺美術館」の表札の闊達な文字は、画家の梅原龍三郎の書。

門をくぐると、正面には、ラ・リューシュと名づけられた正16角形のユニークな建物が出迎えてくれます。

この建物のオリジナルは、もともとギュスターブ・エッフェルが設計し、1900年に開催されたパリ万国博覧会のワインのパビリオンとして建設されたもの。

その後、モンパルナスに移築されてアトリエに改装され、通称ラ・リューシュ(蜂の巣)と呼ばれ、シャガール、スーチン、モジリアニなどの画家たちが若き日に住んだ場所として知られています。

この建物を模して1981年(昭和56年)にこの地に再現されたラ・リューシュも、芸術家たちの創作の場となっています。

さて次は、谷口吉生氏設計による清春白樺美術館に向かいましょう。前庭の白樺林の先に建つ瀟洒な建物です。

1983年(昭和58年)に建設された清春白樺美術館は、武者小路実篤、志賀直哉など『白樺』の同人が構想した“幻の美術館”を、武者小路、志賀の両氏を敬愛し、個人的にも親交のあった吉井長三氏が実現したものです。

『白樺』の同人が好んだジョルジュ・ルオーの作品をはじめ、梅原龍三郎、岸田劉生、バーナード・リーチ、中川一政など『白樺』の運動に参加した芸術家の作品と『白樺』関係の書簡、原稿などの資料、『白樺』の創刊号から最終号までが常設展示されています。

また、特別展示として2013年9月23日(月)まで開催されているのが、「東山魁夷展−唐招提寺障壁画版画展−」です。

東山魁夷画伯が、唐招提寺の障壁画を制作するために、日本と中国を旅した際に描かれた作品を後に版画にしたものが展示されている展覧会。

清春白樺美術館で展示作品を鑑賞したら、白樺林の中にひっそり佇むルオー記念館(礼拝堂)に立ち寄りましょう。

20世紀の著名な宗教画家であるジョルジュ・ルオーを記念して建設された谷口吉生氏設計の礼拝堂です。入り口の扉の上のステンドグラス「ブーケ」はルオーの作品。祭壇背後の木彫のキリスト十字架(17世紀)はルオー自身の彩色によるとか。

さらに奥に進むと、東京・新宿から移築された吉田五十八氏設計の画家・梅原龍三郎アトリエにでます。

画家の好んだ紅殻色の京壁や床の間などを取り入れた和風アトリエには、画家のイーゼル、絵の具箱などが展示されています。

さて、今回ご紹介する清春芸術村の最大の見所が、2011年に開館した安藤忠雄氏の設計による鉄筋コンクリート2階建ての「光の美術館」です。

内部は吹き抜け構造で、展示室には人工照明がなく、季節や時間とともに変化する自然光のみで作品を鑑賞するというユニークなコンセプトの美術館。

ギャラリーには、ピカソの後継者といわれたスペイン現代美術を代表する作家 アントニ・クラーベ(1913〜2005)の作品が常設展示されています。

不思議と落ち着く空間で、クラーべの大作「赤い点」をはじめとする絵画、彫刻、タピスリーなどさまざまな作品を鑑賞することができます。

さて、緑のフィールドの奥の一角に2006年に完成した、建築史家藤森照信氏の設計による一本足の茶室「徹」もまた、一見の価値があります。

茶室を支える檜は、清春芸術村に植栽されていた樹齢80年の木を倒して使用、建築にあたっては、縄文建築団のメンバーである赤瀬川源平氏、南伸坊氏等が手伝って作り上げたといわれる建物。

哲学者谷川徹三を記念して建てられ、命名は作家の阿川弘之氏によるといわれる作品です。

広大な緑のフィールドには、エッフェル塔の階段も展示されています。 こちらは、エッフェル塔完成百周年の1989年に塔の階段の一部がフランスより清春芸術村へ移設されたもの。

その他、フランスの彫刻家セザールの彫刻「親指」やザッキンの「メッセンジャー」と題する彫刻も野外展示されています。

豊かな自然に囲まれた広大な清春芸術村には、新旧さまざまな個性豊かな建築や彫刻が点在しているのも魅力です。

芸術の秋に先駆けて高原の美術館、清春芸術村でアートと建築を楽しんでみませんか?

自然とアートが融合した心地よい環境で、ゆったりと作品に対峙し、作品のもつストーリーに思いを馳せ、心豊かな時間を過ごすことができるでしょう。

桜や新緑、紅葉を楽しみがてらお立ち寄りになるのもおススメです。

お時間があれば、隣接する「北杜市郷土資料館」に立ち寄られるのも良いかもしれません。







赤ちゃん連れのお母様へ:
清春芸術村はベビーカーで入場できます。






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清春芸術村 正門

ラ・リューシュ

清春白樺美術館 

清春白樺美術館 「東山魁夷展」 展示風景

ルオー記念館(礼拝堂)


光の美術館 クラーべ・ギャラリー

光の美術館 クラーべ・ギャラリー 展示風景

茶室「徹」

エッフェル塔の階段







施設情報

清春芸術村
公益財団法人 清春白樺美術館 /光の美術館

住所:山梨県北杜市長坂町中丸2072

TEL:0551-32-4865 (清春白樺美術館)       0551-32-3737 (光の美術館)

開館時間:
清春芸術村・清春白樺美術館:午前9時-午後5時
(入館は4時30分まで)
光の美術館:午前9時−日没まで
(2013年4月現在の閉館は午後5時)

休館日:年末年始 ・ 月曜日

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
清春芸術村をご覧ください。

*掲載許諾・取材協力:清春芸術村  
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