特集: flânerie(そぞろ歩き)

<四季折々の京都>

第54回 琵琶湖疎水記念館界隈

京都の魅力といえば、なんでしょう?

その食や歴史のある神社仏閣、美しい日本庭園と答える方が多いかもしれません。

しかしそれらを陰でささえているのが豊かな「水」だということことをご存じでした?

そしてその水源のほとんどを琵琶湖疎水がになっているということを。

琵琶湖疎水記念館は京都の偉大な産業遺産である「琵琶湖疏水」についてトータルに紹介している ミュージアムです。





大津市観音寺から京都市伏見区堀詰町までの全長約20kmの「第1疏水」、 第1疏水の北側を並行するトンネルを通して全長約7.4kmの「第2疏水」、そして 京都市左京区の蹴上付近から分岐し北白川に至る全長約3.3kmの「疏水分線」などから構成されています。

明治期の竣工から現在でも現役で活動しているとは驚きです。



そもそも琵琶湖疎水のプロジェクトは、明治維新による東京遷都によって人口の約3分の1が減少し、 京都が都市として衰退に向かうことをくい止めるため、第3代京都府知事、北垣国道による一大事業でした。

北垣は、琵琶湖から引いた疏水の水力で新しい工業を興し、舟で物資の流通を盛んにしようと運河を計画したのです。

当時最新の技術や知識を学んでいた若い田邉朔郎(当時21歳)を技師として起用。また、 欧米の測量術を学んで実績を積んでいた島田道生(当時33歳)が精密な測量図を作成し、 明治18(1885)年に工事が開始されました。

琵琶湖疏水の建設は、設計から施工まですべての工程を日本人の手で担った最初の事例となったそう。

琵琶湖疎水記念館では蹴上インクライン上を舟を載せた台車が行き来していた情景が分かるミニチュア模型が展示。 蹴上・岡崎エリアのジオラマやアーカイブ映像の視聴コーナーなどもあります。 前庭からは、疎水噴水の先に岡崎疏水をのぞめる気持ちの良い景観も楽しむことができます。





付近の南禅寺境内には、琵琶湖疎水の稼働中の水路橋、「水路閣」も良い雰囲気でたたずんでいます。



境内の景観に配慮し、田邉朔郎が設計・デザインしたレンガ、花崗岩造りのアーチ型のオシャレな橋脚です。

巨大なレンガのアーチを間近で見たり、フォトスポットとしても楽しめます。実際に水の流れも観察できるとか。

さて、琵琶湖疏水の水によって、岡崎地域に多数形成された文化的景観も見どころです。



近代日本庭園の先駆者といわれる作庭家 七代目植治こと小川治兵衛の手で疏水の水を利用した庭園が作られ, 日本屈指の近代的日本庭園群が次々と花開いていったのです。

京都東山・南禅寺界隈に新たに形成された別荘地において、東山の借景と琵琶湖疏水の引き込みを 活かした近代的日本庭園群(南禅寺界隈疏水園池群)の出現です。

明治27年、植治は並河靖之邸の七宝焼き工房に研磨用として引きこんだ疏水を庭園に引きました。 次いで山縣有朋の求めに応じて、庭園用を主目的として疏水を引きこんだ無鄰菴の作庭を開始しました。



この第3・9代内閣総理大臣 山縣有朋が京都の居所として活用した無鄰菴は,明治期を代表する植治の名庭園です



琵琶湖疎水記念館界隈で京都において花開いた近代的日本庭園群など琵琶湖疎水の歴史遺産を巡ってみてはいかが?



DATA
【琵琶湖疎水記念館】

京都市左京区南禅寺草川町17
TEL::075-752-2530
開館時間:9:00〜17:00
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日・休日の場合は翌平日休館) 年末年始(12月29日〜1月3日)
https://biwakososui-museum.city.kyoto.lg.jp/
【無鄰菴】
京都市左京区南禅寺草川町31番地
TEL & FAX: 075-771-3909
https://murin-an.jp/