特集: flânerie(そぞろ歩き)

<四季折々の京都>

第46回 桂離宮 その4

桂離宮唯一の草庵茶室・松琴亭を過ぎると苑路は岸沿いに蛍谷へと続き、蛍橋と呼ばれる土橋に到着します。



蛍谷の名はこの付近に夏に蛍が多く飛び交うことに由来するといわれています。 両岸に樹木が茂った傾斜の急な山が迫る谷間の風情をかもしだしているエリア。

蛍橋を渡ると賞花亭のある大中島に入ります。 賞花亭に至る道の傍らには水蛍といわれる石燈籠があります。 これは、源氏物語の明石の上の庭のかがり火になぞらえたとか。



賞花亭は、茅葺切妻屋根に皮付の柱を用いた間口2軒、奥行1間半の小規模な建物です。



土間を真ん中にしてコの字型に畳4枚を腰掛のようにめぐらした構造。



南壁に竹の練子窓、西壁に下地窓を設け正面と南側面を開放したつくりです。

内部に竈と炉を築き南の壁には水屋棚を設えています。

練子窓からは、背後の谷がのぞめ、深山幽谷の趣。

賞花亭前には五輪塔の水輪を転用した鉄鉢形手水鉢が設置されています。



正面からは眼下に神仙島を中心に天橋立などたどってきた道筋を眺望することができます。



対岸の書院群も望むことができる素晴らしい眺め。



峠の茶屋から眼下を眺めるという趣向が存分に活かされた茶亭です。



この亭はもと今出川本邸にあった龍田屋を智忠親王の時に移されたそう。 ストーリーのある眺めを楽しみながらのお茶席は話題性もあったことでしょう。



さて、賞花亭の山裾に立つ園林堂は智忠親王の代に建造された桂離宮で唯一の本瓦葺の 建物。当初初代智仁親王の尊影とその師細川幽斎の尊像が納められていたそうですが、その後は この別荘のオーナー八条宮家代々の位牌と尊影が安置されていた持仏堂となっています。

次号に続く。