アート&カルチャー


第162回
東京藝術大学大学美術館
The University Art Museum,
Tokyo University of the Arts
(東京都台東区上野公園)

猛暑もようやくおさまり秋風がたちはじめた9月。
30℃を越えるとさすがに美術館にでかける気になれなかったアート好きさんたちも そろそろ活動を再開しようと計画中の頃かもしれません。

そこで、今回は、爽快感がないまま終わってしまう今年の夏の印象を 吹き飛ばすような、とびきり素敵な展覧会をご紹介しましょう。

東京藝術大学大学美術館で開催中の「円山応挙から近代京都画壇へ」展です。(2019年9月29日[日]まで/前期:9月1日[日]まで、 後期:9月3日[火]から)

ところで、展覧会場の東京藝術大学大学美術館は、東京都台東区上野公園に位置する東京藝術大学美術学部側の構内にあり、 東京藝術大学の前身である東京美術学校の設置に先立つ時期からのコレクションや、歴代卒業生の作品などを収蔵・展示しているミュージアムです。

東京美術学校時代には、収蔵品を展示するために、1929年(昭和4年)に赤煉瓦造の「陳列館」、 1935年(昭和10年)に白壁、瓦葺で城郭風の近代和風様式の「正木記念館」が建設されました。

陳列館は、大学美術館の本館ができるまでは、芸術資料館のメイン・ギャラリーとして親しまれたそうです。 正木記念館は1901年(明治34年)から1932年(昭和7年)まで校長を務めた正木直彦を記念して建てられ、2階には正木校長の希望で、 日本美術を展示するための書院造の和室が設えられているとか。

これらの展示館は1970年(昭和45年)東京芸術大学芸術資料館という名称で一般向けにも開館し、 展覧会開催中は学外の人も自由に観覧できるようになったそうです。

しかし、この芸術資料館、スペースも限られ、また、老朽化等のため、 1998年(平成10年)に東京藝術大学大学美術館と改称、翌1999年には、ミュージアムショップや カフェテリア、画材店などを備えた美術館本館が開館しました。

現在では、収蔵品は、かつての教員や卒業生の作品をはじめとする日本近代美術を中心に、その数約2万9000件余りに達しています。 東京藝術大学大学美術館では、大学自体の収蔵品の展示公開のほか、さまざまな特別展を開催しています。

現在開催されている展覧会が、「円山応挙から近代京都画壇へ」。(2019年9月29日[日]まで)

様々な流派が百花繚乱と咲き乱れた18世紀の京都で、写生画で一世を風靡した円山応挙が確立した円山派と 与謝蕪村に学び、応挙にも師事した呉春によって興された四条派。
これら二派が円山・四条派として、その後の京都の主流となり近代にいたるまで、京都画壇に大きな影響を 及ぼしました。

「円山応挙から近代京都画壇へ」展では、応挙、呉春を起点として、長沢芦雪、渡辺南岳、岸駒、岸竹堂、幸野楳嶺、 塩川文麟、竹内栖鳳、山元春挙、今尾景年、上村松園ら近世から近代へと引き継がれた画家たちの系譜をたどります。

日本美術史のなかで重要な位置を占める、円山・四条派の世界を紹介する、これまでにない大規模な展覧会。 取材してきましたので、早速ご紹介しましょう。

東京藝術大学大学美術館へのアクセスは、JR上野駅公園口から徒歩約10分が便利です。西洋美術館前を経て東京国立博物館前を左に進むと、 左手に東京藝術大学と書かれたレンガ造りの門が現れます。門の中に建つ近代和風様式の 正木記念館に沿って進むと、左手前方に地上4階、地下4階の東京藝術大学大学美術館本館が現れます。

門を抜けると左手に陳列館が、正面には、木々の緑の額縁の中に、開催中の「円山応挙から近代京都画壇へ」展の大看板が目に入ります。

早速、美術館に入り、チケットを購入し、まずは「円山応挙から近代京都画壇へ」展の始まる3F にエレベーターで向かいます。

展示は「すべては応挙にはじまる。」、「孔雀、虎、犬。命を描く。」、「山、川、滝。自然を写す。」、 「美人、仙人。物語を紡ぐ。」という4つのテーマから構成されています。

「すべては応挙にはじまる。」では、まず写生画で有名な応挙の重要文化財「写生図巻」が展示されています。 自身の目で見た花鳥、昆虫、動物を生き生きと写した図巻です。当時こんな斬新な画風で描いた絵師がいたでしょうか? 京都で大評判となるのもうなずけます。

さて、なんといってもこのコーナー、いやこの展覧会最大の見所は、兵庫県香住の大乗寺、一名応挙寺の障壁画です。 応挙とその弟子たち、さらに呉春も参加した円山・四条派の魅力が詰まった襖絵群の再現展示です。

重要文化財の襖絵群を大乗寺客殿各室の雰囲気を体感できるよう立体的に展示しているのも斬新です。

特に応挙最晩年の作といわれる重要文化財の「松に孔雀図」は、金地に孔雀と松を墨一色で描いた傑作! 墨一色で描かれてはいるものの孔雀は青色、松の幹は茶色、松葉は緑がかった色に見えるから不思議! しかも松葉は3D?!金箔の地に墨の濃淡を駆使することで、多様な表現を生み出す応挙の技術力、表現力に感動します。 皆様も是非会場で体験してみてください!

さらにいずれも重要文化財の禿山の間の呉春の「群山露頂図」、使者の間の山本守礼「少年行図」と亀岡規礼「採連図」、 農業の間の呉春「四季耕作図」の襖絵群も必見!

さらに、この章では呉春の師事した蕪村の作品も展示されていますのでお見逃しなく!

さて、次は「孔雀、虎、犬。命を描く。」に進みましょう。

応挙は、鳳凰や龍といった架空の動物よりも孔雀や鶴、虎、犬、猿、鹿など生きた鳥や動物たちをよく 観察して描こうとしました。

鳥の羽一枚、動物の毛一本まで写し取ろうとした作画態度は弟子たちに引き継がれ、猿の得意な森派、虎を得意とする 岸派などが活躍。

その写生に撤する伝統は、近代になっても京都画壇の重要な特性として受け継がれていったとか。

この章では、応挙の子犬を描いた「狗子図」に目が釘づけ!!コロフワな子犬の愛らしい姿に心和んでしまいます。

また、「魚介尽くし」も見所です。なんと総勢28名の画家たちが、ひとつの画面に魚介類を描いた合作!ほぼ朱だけの淡彩で、 全体に統一された画風で描かれた珍しい作品です。円山・四条派の結束力の固さを表しているのかも。

さて、次は、B2Fの展示室1に移り、「山、川、滝。自然を写す。」を観てゆきましょう。

応挙の登場までは、絵画の基本は、やまと絵か中国画でした。そこでは、自然を描くといっても、現実とは違った名所絵の世界か見たことのない山水世界。 応挙は、まず実際の場所を好んで描き、さらにその場に立った時の臨場感までも写し出そうと試みました。

このコーナーでなんといっても必見なのが、応挙の絶筆作品として知られる代表作「保津川図」。 ダイナミックな流れとともに細部の写生的描写も怠らない描法はさすがです。

保津川、嵐山などのモチーフは円山・四条派の系譜で繰り返し、取り上げられているそうです。

また野村文挙の「近江八景図」や川合玉堂の名作「鵜飼」も展示されていますので、お見逃しなく!

さて、最後のテーマ「美人、仙人。物語を紡ぐ。」は、展示室2で観ることができます。

美人画では、唐美人と呼ばれる中国の貴婦人を描く伝統を踏まえ、温和で品格のある女性表現を生み出した応挙。

その流れを汲んだと思われるのが、近代美人画の世界を確立した上村松園です。

松園の「楚蓮香之図」は、応挙に同画題作品があるという魅力的な美人画。楚蓮香とは、 外出するとそのかおりを慕って、蝶が付いてきたという中国の唐時代の美女。

また、仙人や物語の登場人物を描く人物画も、その後の円山・四条派でも盛んに描かれていきました。

さて、円山・四条派の世界をたっぷり楽しんだら、2Fのミュージアムショップに立ち寄るのもいいかもしれません。 展覧会図録などのほか、所蔵名品グッズ、ショップオリジナルグッズ、芸大生制作の作品などが 取り揃えられています。お気に入りがみつかるかも。

また2Fにはホテルオークラ直営カフェがありますので、ランチやティータイムに利用できます。

9月の一日、東京藝術大学大学美術館で開催中の「円山応挙から近代京都画壇へ」展にいらしてみませんか?(2019年9月29日(日)まで)

日本美術史のなかで重要な位置を占める円山・四条派の世界を楽しむことができるまたとない機会です。お見逃しなく!

シルバーウィークのお出かけスポットとしてもおすすめです。


*京都展:京都国立近代美術館 2019年11月2日(土)-12月15日(日)/前期:11月2日−11月24日、後期:11月26日−12月15日


                                                                                                                        



【赤ちゃん連れのお母様へ】
・東京藝術大学大学美術館はベビーカーで入館できます。
(混雑時は、 ベビーカーのご使用をお控えいただくことがあります)
・上下階の移動には、エレベーターが設置されています。
・おむつ替えは、1Fのバリアフリートイレにおむつ替えシートがあります。



このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気 に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せください。 お待ちしております。




東京藝術大学大学美術館 本館

同 陳列館

同 正木記念館

「円山応挙から近代京都画壇へ」展
(2019年8月3日[土]〜9月29日[日])

重要文化財「写生図巻」甲巻(部分)
円山応挙 明和8年〜安永元年(1771〜72)
株式会社 千總蔵
東京展:後期展示、京都展:後期展示

 重要文化財「松に孔雀図」(全16面のうち4面)
円山応挙 寛政7年(1795)
兵庫・大乗寺蔵
東京展のみ・通期展示

「狗子図」
円山応挙 安永7年(1778)
敦賀市立博物館蔵
東京展:後期展示、京都展:前期展示

重要文化財「保津川図」(右隻)
円山応挙 寛政7年(1795)
株式会社 千總蔵
東京展:後期展示、京都展:後期展示

「楚蓮香之図」
 上村松園 大正13年(1924)頃
京都国立近代美術館蔵
東京展:後期展示、京都展:後期展示

芸大美術館ミュージアムショップ






施設情報

東京藝術大学大学美術館

住所:東京都台東区上野公園12−8

TEL:03−5777−8600(ハローダイヤル)

開館時間:
10:00−17:00(入館は16:30まで)

休館日:
毎月曜日(ただし月曜日が祝日・振替休日の場合は、開館、翌火曜日休館)
入学試験期間、年末年始、展示替・保守点検のための休館

観覧料:
特別展は展覧会ごとに異なりますので、お問合せください。

藝大コレクション展
(会期はお問い合わせください)
一般 430円、大学生110円
高校生以下及び18歳未満 無料
※障がい者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料。

【円山応挙から近代京都画壇へ】
一般 1500円、高校・大学生 1000円
中学生以下 無料
*障がい者手帳をお持ちの方(介護者一名を含む)は無料
公式サイト:https://okyokindai2019.exhibit.jp/

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
東京藝術大学大学美術館をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
東京藝術大学大学美術館
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