アート&カルチャー

第200回 そごう美術館
Sogo Museum of Art
神奈川県横浜市


秋も次第に深まってきました。

澄みきった秋空の下、活動範囲を広げたいところでしたが、この9月は台風にじゃまをされなかなか思うようになりませんでした。

しかし、横浜にゆかりのある二人の人物から生まれた美しい陶磁器たちとその背景にある興味深いストーリーを紹介する 展覧会を開催している美術館に出会いましたのでご紹介しましょう。

「アールヌーヴォーからアールデコに咲いたデザイン オールドノリタケ×若林コレクション」展を開催中のそごう美術館です。 (2022年9月10日〜10月16日)

そごう美術館は、JR横浜駅東口の目の前に位置するそごう横浜店6階にあるミュージアム。横浜の新しい都市づくりを目指す 「みなとみらい21計画」の先駆的役割を担って横浜そごうが1985年9月20日に開店する際、同時に開館した美術館です。

百貨店内のミュージアムとしては、日本初の博物館法に基づく施設だそう。

鈴木信太郎などの油彩・水彩約200点を収蔵品の中心とし、 展覧会では洋画・日本画・工芸・彫刻・版画・書・写真など国内外の幅広いジャンルの芸術品を展示しています。

さて、開催中の展覧会「アールヌーヴォーからアールデコに咲いたデザイン オールドノリタケ×若林コレクション」 の「オールドノリタケ」とは、明治中期から第二次世界大戦期にかけて、株式会社ノリタケカンパニーリミテド のルーツ、森村組および日本陶器によって製作・販売・輸出された陶磁器。

また、「若林コレクション」はオールドノリタケの日本屈指のコレクションだそうです。

19世紀後半、欧米では万国博覧会が各地で開催され、日本をはじめとする異国への関心が高まりを見せます。 そのなかで、明治政府の殖産興業政策の一環として陶磁器の生産が強化され、万国博覧会などを通じて欧米諸国に紹介されました。

こうした時代に森村市左衛門(1839−1919)は東京に森村組を創業します。武具商に生まれた市左衛門は、貿易商を志し、横浜で 舶来品を仕入れ、武家に販売する商いを始めました。

その後アメリカに渡った弟・豊と共に、陶磁器の製作・販売・輸出を拡大していきました。

一方大倉孫兵衛(1843−1921)は、江戸・日本橋の絵草子屋に生まれ、横浜では、外国人を相手に錦絵を販売していました。 こうした二人が横浜で出会い、大倉孫兵衛が森村組に参画することで森村組の陶磁デザインに一大転機をもたらします。 伝統的な日本の陶磁器にアールヌーヴォーやアールデコといったスタイルを取り入れたのです。

審美眼やデザイン力の高さを活かして、森村組の主にデザイン面で活躍しアートディレクター的役割をになったとか。

のちに、息子・和親とともに大倉陶園を創始しました。

森村組と、森村組の関連会社として設立された日本陶器は、アメリカの販売拠点であるモリムラブラザーズとの協同により、 当時の欧米の顧客ニーズをいち早く取り入れ、新しいデザインの陶磁器を次々と生み出しました。

この展覧会では、こうして生まれた「オールドノリタケ」の陶磁器やデザイン画などが紹介されています。

アールヌーヴォーの華麗な絵付けを施された作品や、アールデコの可憐なモチーフが描かれた作品など、 欧米に学びながらも独創性を開花させた意匠、技法、器種を網羅する若林コレクションから観ることができます。

明治工芸や明治輸出工芸は、最近大きな関心を集めています。明治輸出工芸の流れをくむオールドノリタケの職人たちは、欧米に学びながら、 さまざまな技法を探求・駆使し、魅力的な陶磁器を生み出していきました。

展覧会の構成は、オールドノリタケを「モチーフ」、「スタイル」、「テクニック」、「ファンクション」 の4つの章から紹介しています。

冒頭の「イントロダクション」を飾るのは、《色絵金彩薔薇文飾壺》など華やかなでインパクトのある作品たちです。

続いて「第T章 モチーフ」ではさらに「植物」、「動物」「人物」、「風景」、「異国趣味」などモチーフ別に 華麗な作品たちを楽しむことができます。プリムローズなどのデザイン画も見どころ!

「人物」モチーフのコーナーでは、ひときわゴージャスな意匠の《色絵金盛ジュール婦人文花瓶》は必見です。 西洋絵画的肖像画を引き立てる華麗な装飾は見事!

さて、次の「第U章 スタイル」では、欧米の流行のスタイルを取り入れたオールドノリタケが紹介されています。

明治期に輸出産業の中心として作られた日本の陶磁器は、日本的な意匠や造形により各国の万国博覧会で高い評価を得、 ジャポニスムの流行にのりましたが、1900年(明治33)開催のパリ万国博覧会ではすでにジャポニスムは影をひそめ、 アールヌーヴォーが全盛期となっていました。

すでに大倉孫兵衛により洋風デザインへ舵をきっていた森村組は、ニューヨークのモリムラブラザーズを通して移り変わる流行を素早く キャッチし、すぐに新しいデザインへ反映することができたのです。

本章では、それらの中からイギリスの名窯風で人気を博した「ジャスパーウェア風」やゴーギャンの絵画を彷彿とさせる「クロワゾ二スム風」、 自然のモチーフや有機的な曲線が特徴の「アールヌーヴォー風」、1920年代から30年代に台頭したデザイン「アールデコ風」の 4つのスタイルのオールドノリタケを観ることができます。

当時最先端だった欧米のスタイルに日本流のニュアンスを加えたデザインが見どころです。

「ジャスパーウェア風」の作品では《白盛牡丹文香水瓶》、「アールヌーヴォー風」では、《色絵金彩藤文花瓶》など 美しくエレガントな作品たちが展示されています。

《色絵金彩婦人文蓋物》などオールドノリタケの中でも一目でそれとわかる「アールデコ風」の陶磁器は、 ノリタケ・アールデコと呼ばれ愛されてきました。

輝く「ラスター彩」を施し、ポップな色使いの愛らしい陶磁器たちは、アメリカで大人気となったそう。

さて、続く「第V章 テクニック」ではオールドノリタケの多彩な装飾技法を観ることができます。

器体の表面を泥漿で盛り上げる「盛上」やその盛上に金彩を施す「金盛」などは、オールドノリタケの代表的装飾技法だとか。

泥漿で表面を点上に盛り上げ、その上から金彩を塗り被せる「ビーディング」、エナメルを宝石のように器面に散りばめる 「ジュール」、《色絵エッチング金盛牡丹文双耳花瓶》の実装された「エッチング」など手の込んだ細密技法は見事です。

さて、「第W章 ファンクション」では森村組が創作した装飾性が高い「ファンシーウェア」、実用を目的とした 「ディナーウェア」について解説しています。

森村組のファンシーウェアは装飾技法がこらされた贅沢な作りであっても、当時のヨーロッパ製の陶磁器に比較すると 手頃な価格であったためアメリカの中産階級を中心として人気となっていました。

しかし、さらなるアメリカでのビジネスを拡大するため森村組には実用に耐えうるディナーウウェアの製品化が必要でした。

そのため森村組は食器に最適な素地の開発を始めます。その後日本陶器が創立され、1913年ついに日本陶器製白色硬質磁器の製造に 成功しました。

第W章では、オールドノリタケの実用面に着目し、ティーカップ&ソーサ―、パーティトレー、灰皿やドレッサーセットなどが展示されて います。

《色絵金彩婦人型ドレッサーセット》など愛らしい作品群も並んでいます。

最後の「エピローグ」では、「横濱を彩るクロスオーバーティータイム」と題するティーパーティのテーブルコーディネートが ディスプレイされています。こちらのコーナーは写真撮影が可能ですので、カメラやスマホをお忘れなく!

「アールヌーヴォーからアールデコに咲いたデザイン オールドノリタケ×若林コレクション」展は、 2021年4月17日から「茨城県陶芸美術館」をかわきりに「石川県立美術館」、「兵庫陶芸美術館」を巡回し、 「そごう美術館」が最終となります。

明治輸出産業の華、オールドノリタケを、質量ともに卓越した若林コレクションで観ることのできるまたとない機会です。 会期は10月16日まで、お見逃しなく!

尚そごう美術館では、2022年10月21日から10月30日まで、「神奈川書家三十人展 第35回記念 神奈川の書 すべてを魅せる百人」が 開催されます。書にご興味のある方におすすめです。












このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
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そごう美術館エントランス


《色絵金盛薔薇文飾壺》1891-1921年頃


《色絵白盛梅文カップ&ソーサ―》1911‐21年頃


《色絵金彩藤文花瓶》1891‐1921年頃


《色絵金彩婦人文蓋物》1920‐31年頃


《白盛牡丹文香水瓶》1908-26年頃


《色絵エッチング金盛牡丹文双耳花瓶》1911-21年頃


《色絵金彩婦人型ドレッサーセット》1908-26年頃


「横濱を彩るクロスオーバーティータイム」



施設情報



そごう美術館

住所:神奈川県横浜市西区高島2丁目18−1 そごう横浜店 6F

TEL 045-465-5515


開館時間:午前10時〜午後8時
※入館は閉館の30分前まで。
※そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合有

休館日:会期中無休
そごう横浜店の休業日に準じ、変更になる場合有

入館料;
一般1,200円
大学・高校生1,000円
中学生以下無料
※消費税含む。



詳しくは直接お問い合わせいただくか
そごう美術館をご覧ください。

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