アート&カルチャー


第150回 北杜市考古資料館
(山梨県北杜市)



9月に入り、東京では、猛暑はようやく収まってきましたが、まだまだ残暑が続く日々。

一方高原では涼やかな風にコスモスが揺れる秋がもう始まっています。

そこで今回は、夏の疲れを癒しがてら旬の「縄文」を楽しめる八ヶ岳南麓・山梨県北杜市に位置する「北杜市考古資料館」をご紹介しましょう。

「北杜市考古資料館」は、八ヶ岳、甲斐駒ケ岳、茅ヶ岳などの山地に広がる広大な北杜市に点在する旧石器から中世までの遺跡の出土品を 展示するミュージアムです。

今年5月「星降る中部高地の縄文世界ー数千年を遡る黒曜石鉱山と縄文人に出会う旅ー」として 「日本遺産(Japan Heritage)」に認定された山梨県・長野県の縄文遺跡の一翼を担っています。

因みに「日本遺産」(Japan Heritage)とは、文化庁が地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを認定するものです。

八ヶ岳を中心とした中部高地は、縄文文化が栄え、他では見られない黒曜石鉱山や、優れた造形を誇る土偶や土器が数多く生み出されました。 こうした縄文文化のすばらしさを、縄文時代から変わらぬ雄大な自然の中で体感できる地域。

北杜市からは、2つの国指定史跡と11遺跡からの出土品が日本遺産の構成文化財に選ばれていて、 出土品は北杜市考古資料館と山梨県立考古博物館で展示しています。

また、東京国立博物館で開催中の特別展「縄文―1万年の美の鼓動」(2018年9月2日(日)まで)にも北杜市考古資料館から2点の特徴ある縄文土器を出品しています。

トーハクの「縄文展」をご覧になった方にもまだの方にも特におすすめ!ご覧になった方には、より縄文を深く楽しめる宝庫!また、 見逃した方には9月13日から「縄文展」出品土器をはじめ様々な出土品に出合えるミュージアムです。

さらに、2018年11月25日まで長野県・原村の八ヶ岳美術館(原村歴史民俗資料館)や同富士見町の井戸尻考古館との 三館共同企画展「一・二・三・四 (ひ・ふ・み・よ) 縄文ライフ〜縄文人と数〜」 も開催されています。

縄文時代、八ヶ岳南麓の広大なフィールドで縄文人たちがどんな生活を繰り広げていたのか興味津々! 取材してきましたので、早速ご紹介しましょう。

東京、名古屋からのアクセスは、中央自動車道長坂ICから約10分と便利です。(電車では、 JR中央本線長坂駅下車北杜市バス、大泉総合支所下車徒歩約10分。)

北杜市考古資料館は、八ヶ岳を背景に拡がる田園の中に静かに佇んでいます。

入口を入ると右手オリエンテーションホールの先に雄大な八ヶ岳をのぞむことができます。

エントランスホールには、「日本遺産(Japan Heritage)」の認定をされた内容についての展示がありますので、観ておきましょう。

受付でチケットを購入し、まずは、2Fの常設展に向かいます。(エレベーター有) 展示室1に至るコリドールには、出現から紐解く縄文土器の変遷が順に展示されています。

いまから約12000年前から約2500年前までの約10000年の間続いた縄文時代に作られた縄文土器たちが 年代順にその特徴とともにずらっと並べられていて壮観です。

特に縄文中期の土器はアーティスティックに魅力的!

さて、展示室1では、北杜の旧石器時代から縄文時代までが、その出土品とともに紹介されています。

黒曜石やそのナイフや槍先型石器等が展示されていて目を引きます。

約12000年前、長く寒かった氷河期が終わり、徐々に気温が暖かくなり、海水面も上昇し、ドングリやクリなどの落葉広葉樹林が東日本にも広がった頃、 縄文時代は始まりました。

八ヶ岳の噴火活動も終息、ほぼ現在とおなじような自然環境になったといわれています。八ヶ岳南麓に暮らした縄文時代の人々も森や川の恩恵を受けながら 現在と同じような光景を眺めて生活していたと思うと感慨深いものがありますね。

そうした恵まれた自然環境の中で、多種多様な土偶や土器が生まれたのでしょう。

とりわけ山梨県は土偶が多数出土する地域だそうで、北杜市からも多数の土偶が発掘されています。

興味深いのが土器についた土偶。特に、顔面把手付土器はユニーク!縄文中期前半の終わりの時期に造られたとか。 その傑作が「津金御所前遺跡 出産文土器」です。(2018年9月2日までトーハクで、2018年9月13日以降北杜市考古資料館展示)

今まさに母親の体から子供が生まれ出てくる瞬間を表しているといわれている特異な造形に驚きます。

顔面把手は土偶装飾と同様なぜかもぎとられた状態で発掘されているそう。

さて、中央に展示されているのが、「国史跡 金生遺跡ガイダンス」です。

金生遺跡は、北杜市大泉町谷戸地内にある縄文時代と戦国時代の集落跡です。

1980年の発掘調査で、縄文時代後期から晩期にかけての大規模な集落跡と大規模な祭りの場(配石遺構)と共に 土偶などの祭りの道具が大量に発見された金生遺跡を紹介する展示です。

1983年に国史跡に指定され、その後整備され遺跡公園となりました。

縄文土器、石鏃や打製石斧などの石器、ヒスイ製の垂飾り、土製耳飾、石棒・石剣  などの儀礼的な道具。イノシシの下顎の骨など多彩な遺物が大量に出土。 中でも土偶は233点も発見され、この時期において全国でも屈指の多さだとか。

大量に出土した土偶の中で、ひときわ目を引くのが「金生遺跡 中空土偶」。(2018年9月2日までトーハクで、 2018年9月13日以降北杜市考古資料館展示)

ほぼ完全な形をとどめていたといい、祭りや儀礼に関係して使われたと考えられているそうです。

さて、次の展示室2では北杜の弥生時代から平安時代の出土品や資料が展示されています。貴重な品々が墓に副葬された弥生・古墳時代、 天皇への献上馬を飼育した官牧が営まれた平安時代に関する展示です。

2Fの展示を楽しんだら、次に1Fの展示室3に回りましょう。北杜の中世(鎌倉時代〜戦国時代)を紹介する展示や 国史谷戸城跡ガイダンスを観ることができます。

甲斐源氏の祖・逸見清光の築城と伝えられ、逸見地域(北杜市域の大部分)の軍事的拠点となった中世の谷戸城跡(資料館隣接) に関するパネル展示や模型展示があります。

最後に受付け脇のスペースで三館共同企画展「一・二・三・四 縄文ライフ〜縄文人と数」(2018年11月25日まで)が開催されています。

縄文人の観念が形となって表れやすい土器から縄文人の数の意識を探る企画展です。

北杜市考古資料館では、口縁部に着目しています。

土器を作り始めた草創期から早期の前半ごろまでは口縁部は直線で器面全面に縄文や撚糸文などを施すものが多く、割り付けなど数の意識は薄かったとか。

早期後半頃からは波状口縁や器面を割りつけるような模様を持つ土器が現れ、数への意識が高まっていきました。

前期後半の頃から4単位や6単位に割り付けが観られる一方後期後半の土器では3単位にこだわったり波状口縁を作っています。

縄文人たちが好んだ数も時期によって変化していた可能性があるとか。

縄文人の数の意識を土器の口縁の形を通して探るという興味深い企画展です。お見逃しなく!

9月の一日、涼やかな高原に秋をさがしがてら「中部高地の縄文世界」を楽しみに 八ヶ岳南麓の「北杜市考古資料館」にいらしてみませんか?

縄文時代の光景を彷彿させる八ヶ岳南麓の広大な大地を体感し、縄文のロマンにひたることができるでしょう。

夏疲れを癒してくれるかもしれません。

より深く「縄文」を学びたい方には考古資料館は知のワンダーランド!リピートするのもおすすめです。

また、お時間あれば、国指定史跡や三館共同企画展「一・二・三・四 縄文ライフ〜縄文人と数〜」を開催する他の二つのミュージアムを巡るのも楽しいことでしょう。

八ヶ岳美術館(原村歴史民俗資料館)と井戸尻考古館の詳細は、このコーナーのバックナンバーでご紹介しています。





このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せください。 お待ちしております。




北杜市考古資料館

オリエンテーションホール

エントランスホール

2F コリドール展示風景

2F 展示室1風景

2F 展示室1風景

「津金御所前遺跡 出産文土器」

2F 展示室1風景

「金生遺跡 中空土偶」

2F 展示室1風景

1F 企画展「一・二・三・四 縄文ライフ〜縄文人と数」

1F 企画展「一・二・三・四 縄文ライフ〜縄文人と数」



 



施設情報

北杜市考古資料館

住所:山梨県北杜市大泉町谷戸2414

TEL:0551-20-5505

開館時間:
9:00〜17:00(入館は16:30まで)

休館日:
・月曜日(休日の場合はその直後の休日でない日)
・休日の翌日
・12月28日から翌年の1月4日まで

入館料:
・一般【高校生以上】200円(100円)
・小中学生100円(50円)
( )内は20人以上の団体料金
・未就学児は無料


詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
北杜市考古資料館をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
北杜市考古資料館

ダウンロード不可
禁無断転載