アート&カルチャー


第145回 国立天文台 
National Astronomical Observatory of Japan
(東京都三鷹市)



春本番の4月がやってきました。

桜前線も急速に北上中!
野も、山も、街も春のベールをまとい華やいでいます。

小さなお子さま連れも戸外の活動を開始するには絶好の季節ですね。

そこで今回は、3月にご紹介した「三鷹市星と森と絵本の家」に隣接する 「国立天文台」の本部、三鷹キャンパスをご紹介しましょう。

というのも「国立天文台 三鷹」には、 天文ファンをはじめ、今年皆既月食に感動した天文初心者に魅力の一般向け見学コースが設置されているのです。

しかも見学が桜の季節に重なればラッキー!春の国立天文台を満喫できるでしょう。

国立天文台
https://www.nao.ac.jp/

さて、国立天文台は、世界最先端の観測施設を擁する日本の天文学のナショナルセンターです。

大学共同利用機関として全国の研究者の共同利用を進めるとともに、 共同研究を含む観測・研究・開発を広く推進し、また国際協力の窓口として、 天文学および関連分野の発展のために活動しています。

本部は、東京都三鷹市に、その他の研究・観測施設が国内外に複数あります。 日本国内では、水沢(岩手県)、野辺山(長野県)、岡山、石垣島(沖縄県)に観測所があるほか、 茨城、小笠原(東京都)、山口、鹿児島に観測局が、さらに、国外には、アメリカ・ハワイと南米チリに観測所があります。

その歴史も古く、始まりは、江戸幕府天文方の浅草天文台。明治になり、東京帝国大学構内に 実測用の天文台が、明治21年(1888)港区麻布に東京天文台が造られました。その後大正3年(1914)から 三鷹への移動が始まり、大正13年(1924)に完了、現在に至っています。

というわけで、緑豊かな国立天文台三鷹キャンパスには、移転当時の面影を残す大正期の建物がいくつも点在しています。 見学コースは、それらの建物や「展示室」などを巡りながら、国立天文台の歴史とその研究活動を一般にも分かりやすく紹介する内容となっています。

アクセスは、JR武蔵境駅、JR三鷹駅、京王線調布駅からバスが便利。『天文台前』停下車すぐです。正門右わきの趣きある守衛所で受付し、 手渡されたビジターワッペン(シール)を貼って見学を始めましょう。

見学コースは、見学マップに記載されたコース内の自由見学です。この日は、まず国立天文台三鷹の中で現存最古の観測用建物、 「第一赤道儀室(国登録有形文化財)」に向かいました。1階が倉庫、2階が観測室という1921年建設のかわいらしい建物です。

正面の階段を上がるとドーム内に設置された口径20センチの屈折望遠鏡と太陽写真儀(カメラ望遠鏡)を見学できます。 赤道儀とは、天体の動き(日周運動:星が地球の自転により、北極星を中心にして、一日で約一回転する運動) にあわせて星を追いかける(追尾する)ことができる架台のこと。 この望遠鏡は1938年(昭和13年)から61年間、太陽黒点のスケッチ観測に活躍したそうです。

次の見学は第一赤道儀室と天文台歴史館の間の道沿いにある太陽系ウォーク。太陽系の距離を140億分の1に縮めて、各惑星の紹介をしています。 太陽から土星までは14億キロメートル、歩いていくと4万年もかかりますが、140億分の1に縮めたこの展示では、 たったの100メートル、数分で到達できます。もし、1歩が約50センチメートルなら、土星までは200歩で到達できることになります。 1歩は700万キロメートルに相当します。

惑星パネルには、惑星の14億分の1の模型がついていて、距離や大きさを体感しながらそれぞれの惑星の特徴を知ることができる展示となっています。 あまりにも大きな数字ばかりで、どうもピンときませんが、宇宙がとてつもなく広大だということだけは感じるかも。

さて、太陽系ウォークの先にあるのが天文台歴史館(大赤道儀室・登録有形文化財)です。高さ19.5メートル、ドームの直径が15メートルの 鉄筋コンクリート造2階建ての建築物。天文・天体観測の歴史について学ぶことができる施設です。

焦点距離10メートルに及ぶ屈折望遠鏡をすっぽり納めた木製ドーム部分は、建設当時半球ドームを作る技術が建築業者になかったため、船底を造る技術を持った 造船技師の力を借りて造られたというユニークな建築。建物外壁には、ロンバルト帯と呼ばれるアーチ模様を繰り返した装飾が施されているなど 見所満載な建物です。

まず階段を上がり、2階ドーム内を見学しましょう。中央には、屈折型の望遠鏡としては日本最大口径を誇るドイツ・ツァイス製の65センチ屈折望遠鏡が展示されています。 美しい木製ドームを背景に迫力満点!

1929年に完成後、主に、星の位置測定を行ってきましたが、老朽化にともない1998年3月をもって研究観測から引退しました。2階ドーム内にはその他 国立天文台の歴史パネル、観測と発見の歴史紹介パネル(世界の望遠鏡の比較)、ガリレオの望遠鏡(レプリカ)が展示されています。

1階には、写真乾板展示、歴史的な観測装置の展示、貴重書(レプリカ)が展示されています。

さて、次は「太陽塔望遠鏡(アインシュタイン塔)」に向かいます。木々の間から覗く外壁の茶色いスクラッチ(引っ掻き模様)タイルが印象的な 地上5階、地下1階(この部分のみ1926年(大正15年)完成)の建物です。

高さ約20mの天辺のドームから入った光は、直径60cmシーロスタット(平面鏡2枚)に反射して垂直に取り込まれ、 北側に続く半地下の大暗室で七色のスペクトルに分けられる構造になっています。 塔全体が望遠鏡の筒の役割を果たしていることから「塔望遠鏡」と呼ばれています。

ドイツ・ベルリン市郊外にあったポツダム天体物理観測所のアインシュタイン塔と同じ研究目的で造られたことから 「アインシュタイン塔」とも呼ばれています。その研究目的とはアインシュタインの一般相対性理論に基づき、 太陽の重力によって光のスペクトルがわずかに赤い方へずれる現象(アインシュタイン効果)を検証するものだとか。

太陽塔望遠鏡は、外観のみ見学したら来た道を引き返し、「展示室」に向かいます。

「展示室」は、国立天文台が行っているプロジェクト(すばる望遠鏡、VERA、アルマ望遠鏡、TAMA300、太陽観測衛星ひので、TMTなど)の紹介や、 観測・研究成果など、最新の天文学に関する展示を観ることができる施設。必見です!

すばる望遠鏡や野辺山宇宙電波観測所の45メートル電波望遠鏡、アルマ望遠鏡などの模型の展示や各研究プロジェクトのパネル展示など興味深い展示が盛りだくさん! ビデオによる映像展示も実施されていますので、お時間があれば視聴されることをおすすめします。 小さいお子さま向けのプログラムもあります。

さて次は、旧図書庫(国登録有形文化財)に沿って奥に進みましょう。1930年に建てられたこの建物は、20世紀末まで図書資料を保管していました。

太陽塔望遠鏡と同じように、壁面がスクラッチタイルで装飾され、窓の位置、ひさしのデザインなどに当時の近代建築物の特徴がみられる建物です。

次に右手に現れるのは、「子午儀資料館(レプソルド子午儀室・国登録有形文化財)」1925年に建てられ、レプソルド子午儀(国指定重要文化財)によって観測が行われていた建物です。 現在は貴重な子午儀を多数展示する資料館となっています。

天頂を通り真北(子の方角)と真南(午の方角)を結んだ線をさす子午線上を通過する天体の位置を精密に観測する望遠鏡が子午儀や子午環です。 そのため、これらの望遠鏡は子午線面内(南北方向)でのみ正確に回転する仕組みになっています。

さて、続く「ゴーチェ子午環室(国登録有形文化財)」は、半円形のドームと入口の台形屋根に特徴のある建物。 ゴーチェ子午環は、天体の精密位置観測に使われていた観測装置。 長期にわたって眼視による月・惑星・恒星の位置観測を行っていましたが、1982年に自動光電子午環が建設され、 第一線を退きました。しかし1992年より10年間程、再び最新のCCDマイクロメータを装備してクェーサーをはじめとする 微光天体の精密位置観測に活用されました。

最後は、「天文機器資料館」、自動光電子午環をおさめる建物です。 天体の精密位置観測に使っていた観測施設で、1982年に建設されました。望遠鏡は、天体の位置を精密に観測できるように特殊な工夫が施されたもの(子午環)で、 1984年から観測に使用されました。

自動光電子午環は、眼視観測の5倍の観測能率を持ち、12等級までの星や銀河の位置を1回の観測により0.1秒の精度で決定することができました。 昼には太陽の観測を行い、また夜には3分間に1天体の割合で、大量の星の観測を行いました。これらの結果をまとめた数々の星表は、 銀河回転や太陽系天体の運動の解明など、天文学の様々な研究に役立ちました。

たっぷりと見学コースを楽しんで、ちょっと一息入れたい時には「展示室」前方の休憩室が利用できます。また、飲食にはこの休憩室か屋外のベンチが利用できます。

平日には、コスモス会館の食堂(11時40分〜13時15分)や購買(10時30分〜17時30分)が利用できます。購買には国立天文台オリジナルグッズなども取り揃えられていますので、 お土産探しに覗いてみては?

春たけなわの一日、国立天文台三鷹キャンパスの見学コースを楽しんでみませんか?

日本の天文学をリードする国立天文台の歴史を体感し天文学の研究の一端にふれ、広大な宇宙にもっとロマンと興味をもつようになるかもしれません。

皆既月食の感動を深め、お子さまとの会話も弾むことでしょう。

三鷹キャンパスで桜も楽しめるのは、4月上旬まで、お見逃しなく!

春休みや夏休みゴールデンウィークのお出かけスポットとしてもおススメです。

お時間があれば、隣接する「三鷹市星と森と絵本の家」に立ち寄られるのもおすすめです。

三鷹市星と森と絵本の家
http://www.city.mitaka.tokyo.jp/ehon/

また、国立天文台三鷹では一般向けイベントも開催されています。 50センチ公開望遠鏡による定例観望会や4D2U(4次元デジタル宇宙シアター)定例公開などです。

中学生以上のお子さま連れの方々には、「4D2U」がおすすめ!

4次元デジタル宇宙プロジェクト(4D2Uプロジェクト)が、天体や天体現象を空間3次元と時間1次元の4次元で「4次元デジタル宇宙コンテンツ」を作成し、 スーパーコンピュータによるシミュレーションのデータや、最新の観測装置から得られるデータを、科学的に可視化した立体映像で提供しています。

いずれも事前申し込みが必要です。詳細は国立天文台HPでご確認くださいね。





【赤ちゃん連れのお母様へ】
・国立天文台三鷹キャンパスはベビーカーで入場できます。(但し階段を使う文化財建物などでは抱っこひもなどのご使用をおすすめします)
・オムツ替えは「4D2U」のトイレにオムツ替えシートが設置されています。
・国立天文台の有料駐車場がありますので、赤ちゃん連れには便利です。
・授乳は上記有料駐車場隣接の「三鷹市星と森と絵本の家」の旧1号官舎棟に授乳室があります。






このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せください。 お待ちしております。




国立天文台

受付(守衛所)

第一赤道儀室(国登録有形文化財)
1921年建設

太陽系ウォーク

天文台歴史館(大赤道儀室・国登録有形文化財)
1926年建設

65センチ屈折望遠鏡
(カール・ツァイス社製)

太陽塔望遠鏡(アインシュタイン塔・国登録有形文化財)
1930年建設

展示室

展示室
 

子午儀資料館
(レプソルド子午儀室・国登録有形文化財)
1925年建設

ゴーチェ子午環室
(国登録有形文化財)
1924年建設

天文機器資料館
1982年建設

4D2Uドームシアター
2007年建設






 



施設情報

大学共同利用機関法人
自然科学研究機構 国立天文台 三鷹 

住所:東京都三鷹市大沢2-21-1


TEL:0422-34-3600(代表)
0422-34-3688

公開時間:
午前10時〜午後5時(入場は午後4時30分まで)

休公開日:
年末年始(12月28日〜1月4日)
*ほかにメンテナンスのため公開を休む場合あり

入場料:無料(見学受付必要)

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
国立天文台  をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
国立天文台 天文情報センター

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