アート&カルチャー

第206回 旧古河庭園
Kyu-Furukawa Gardens 
東京都北区西ヶ原


春爛漫が続いています。花の季節も桜から花の女王バラに移ってきました。

東京のバラの名所といえば、神代植物公園を筆頭に数々ありますが、今回は、一味違った文化の香りを色濃く漂わせる 「旧古河庭園」を取材してきましたのでご紹介しましょう。

旧古河庭園は、東京都北区西ケ原にある国の名勝と指定され、東京のバラの名所としても親しまれている都立庭園です。

武蔵野台地から斜面そして低地という土地形状を活かし、北側の小高い丘には洋館、斜面は洋風庭園がデザインされ、 低地には日本庭園が造園されるというたぐいまれな特徴を持った名園です。

この土地はもとは明治の元勲・陸奥宗光の邸宅でしたが、宗光の次男が10大財閥の一つ古河家の養子となった時に古河家の所有となったそうです。

現在の洋館と洋風庭園の設計を手がけたのは、明治から大正にかけて、鹿鳴館、ニコライ堂、旧岩崎邸庭園洋館などを設計した英国人建築家・ ジョサイア・コンドル(1852〜1920年)。

大正時代の日本の上流階級では、邸宅を建てる際、西洋建築にすることが好まれました。コンドルは、邸宅デザイン、 特に財閥系の邸宅建築の実績を多く持ち、日本の近代西洋建築史の中でも高い評価を受けている建築家です。

また、コンドルは旧古河庭園の洋風庭園の設計も手がけ、当時英国で再流行していたビクトリア朝のイタリア(テラス)式を採用 しました。 洋館から見下ろすように配された洋風庭園は3段構造になっています。

バラの咲く左右対称の幾何学模様の洋風庭園、下段のテラスに向かうアプローチ、それらを演出する黒ボク(富士山の溶岩)の石積みが、 段下へと続く日本庭園の入り口に誘う演出が見事!

洋風庭園から自然風景式の日本庭園へと景観が縦に変化するという凝ったデザインが見所です。

池泉回遊式の日本庭園は、京都の庭師・植治と通称される小川治兵衛(1860〜1933年)が手がけました。

植治は、宝暦年間(1751〜1763年)から代々「小川治兵衛」の名前を継いできた作庭家の屋号。

特に、7代目小川治兵衛(1860〜1933年)は、山縣有朋の京都別邸である無鄰菴、平安神宮神苑、円山公園、 京都東山の別荘など名だたる名園を作庭した名人と呼ばれた庭師です。旧古河庭園の日本庭園は、 東京に残る数少ない植治の作品の一つです。

旧古河庭園は、大正初期の庭園の原型を留める貴重な史跡として2006(平成18)年、国の名勝に指定されました。

アクセスはJR京浜東北線「上中里」下車徒歩7分又はJR山手線「駒込」下車徒歩12分、東京メトロ南北線「西ヶ原」下車徒歩7分が便利です。

この日は上中里駅前の蝉坂を平塚神社に沿って右手方面に本郷通まで進み、つきあたりを左折するとほどなく右手に 「国指定名勝 都立 旧古河庭園」と書かれた正門が現れます。

入り口左手のサービスセンターでチケットを購入し早速入園しましょう。

正面に進むと洋館がありますが、始めに洋風庭園を巡ることにして芝生を巡る園路を歩きます。園路からは芝生の先に イギリスコッテージ風デザイン、赤みをおびた黒いレンガ造りの外壁が印象的な洋館が眺められます。 イギリス風景画を彷彿とさせる景観でしょうか。

次に洋館の南側正面に進むとテラス式庭園では、春バラの饗宴が始まっています。 

木香バラをはじめ、名女優ロミー・シュナイダーに捧げられたといわれる赤いバラ「カクテル」も華麗な姿を現わしています。

尚、旧古河庭園では4月28日(金)から6月30日(金)まで「ROSE FESTIVAL in SPRING(春のバラフェスティバル)」と題し、 恒例の春のイベントが開催されています。

旧古河庭園に植栽されている約100種200株のバラたちが、イギリス風洋館を背景に春を待ちかねたように咲き誇る景観は見事!

期間中「春バラの早朝開園」、「春バラの音楽会」、「春バラの人気投票」、「臨時売店」、「庭園ガイド」なども開催されますので、 詳細をHPでご確認の上、参加されるのもいいかもしれません。

春のバラは花の形が大きく、遠くからみても迫力があるそうなので、この時期に来園されるのがおすすめです。

さて、旧古河庭園は日本庭園も見所です。

日本庭園は傾斜状敷地の底地部分にあり、その中心は心字池です。優雅な曲線が特徴で、「心」の草書体を型取り、鞍馬平石や伊予青石などから 構成されているそう。

池を眺める中心に「舟着石」、正面には「荒磯」、雪見灯篭、枯滝、石組み、背後には築山がデザインされています。

園内の最も勾配の急な所をさらに削って断崖としたという、樹林に覆われた深山幽谷の趣を表現した景観も見事!

旧古河庭園が京都の庭師・植治、7代目の代表作の一つといわれているのもうなづけます。

5月から6月、「春のバラフェスティバル」の一日洋風庭園と日本庭園の両方を楽しめる旧古河庭園にいらしてみませんか?

洋館を背景にした素晴らしいバラの庭と深山幽谷を思わせる日本庭園で癒され、庭園を通して英国文化や日本文化に関心をもつようになる かもしれません。

ゴールデンウィークのお出かけスポットとしてもおすすめです。




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おむつ替えはトイレにおむつ替えベッドがあります。









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国指定名勝 都立 旧古河庭園
エントランス


洋館 東側


展望台より洋風庭園を望む

洋風庭園 


洋風庭園


春のバラフェスティバルチラシ


日本庭園・雪見燈篭


日本庭園・大滝


日本庭園








施設情報


旧古河庭園(国指定名勝 都立)

住所:東京都北区西ヶ原1−27−39

TEL: 03-3910-0394


開園時間: 午前9時〜午後5時(入園は午後4時30分まで)
   

休園日:
・年末・年始(12月29日〜翌年1月1日まで)

入園料:
一般   150円
65歳以上 70円
(小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料)

※無料入園日 みどりの日(5月4日)、都民の日(10月1日)
※洋館(旧古河邸)は別途入館料必要(一般400円 小学生以下無料)
 
【旧古河邸(大谷美術館】 http://www.otanimuseum.or.jp/kyufurukawatei/


詳しくは直接お問い合わせいただくか
旧古河庭園をご覧ください。

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