アート&カルチャー


第153回 泉屋博古館
SEN-OKU HAKUKOKAN MUSEUM
(京都市左京区鹿ケ谷)



名残の秋を楽しむ季節がやってきました。

ゆっくりと色づきの進んでいた今年の紅葉もどうやら11月下旬には、 ピークを迎え、例年通りに落ち着くようですね。

なんだかんだといっても自然のサイクルは正確。

そこで、今回は京都に名残の紅葉を愛でにいらっしゃる方にもおすすめのミュージアムをご紹介しましょう。

京都市左京区鹿ケ谷に位置する住友家のコレクションを保存・展示する、「泉屋博古館」です。

住友家第15代当主住友春翠氏の蒐集された、世界的にも評価の高い中国古銅器と500点余りの鏡鑑のコレクションを 保存・公開するために1960年(昭和35年)から活動を開始、1970年(昭和45)京都市左京区鹿ヶ谷に 展示室をオープンし、さらに 2002年(平成14年)には、東京港区六本木に「泉屋博古館分館」を開館しました。(泉屋博古館分館はバックナンバーへ)

そのコレクションは、上記の他中国・日本の書画、洋画、近代陶磁器、茶道具、文房具、能面・能装束など 3000点以上もの作品から 構成されています。

それら珠玉のコレクションと関連する作品からなる展覧会を開催しているのが、こちら京都の泉屋博古館と東京分館です。

さて、今回ご紹介する展覧会が特別展「フルーツ&ベジタブルズ ─ 東アジア蔬果図の系譜」です。(2018年12月9日[日]まで)

タイトルから興味をそそられる展覧会。しかも若冲と呉春の野菜絵巻の競演が観られるとか。 早速取材してきましたので、ご紹介しましょう。

JR京都駅からのアクセスはバスが便利。5番系統では、「東天王町」下車東へ200m。100番系統では、「宮ノ前町」下車すぐです。

泉屋博古館は、住友春翠氏が別荘としてもとめたという東山の風光明媚な地に静かに佇んでいます。

緑に囲まれたエントランスを入り受付でチケットを購入、青銅器館ロビーをぬけ、渡り廊下を通り、まずは、企画展示室に向かいます。

ところで、「フルーツ&ベジタブルズ ─ 東アジア蔬果図の系譜」展にある「蔬果図(そかず)」とはなんでしょう。

みずみずしく新鮮な野菜や、香りたかく芳醇な果物−日々の暮らしに活力と潤いを与える蔬果は、日本でも長く描かれてきました。

その歴史は、中国宋代にさかのぼります。果物は、旺盛な生命力で子孫繁栄などの象徴とされ、吉祥画として好んで描かれました。 また、従来卑近で描くに値しないとされてきた蔬菜の、泥にまみれつつも清楚な姿が、俗に交わらない高潔の象徴とされるなど、多様なイメージの 熟成とともに蔬果図が生まれ、やがて朝鮮、中世の日本へと広がったというのです。

近世に入ると本草学の流行にともない変化に富む姿形や性質にも関心が寄せられ、より写実的でバラエティ豊かになっていきます。 同時に漢詩文や俳諧などの影響を受けた作品がみられるようになります。

そして、江戸後期、京都を代表する二人の画家、若冲と呉春が相次ぎ蔬果絵巻を制作します。錦小路の青物問屋主人だった伊藤若冲(1716−1800)の 《菜蟲譜》と俳諧や美食家としても知られる呉春(1752−1811)の《蔬菜図巻》です。 表現は対照的ながら、古来の蔬果図の影響に、本草学や漢詩文・俳諧の新潮流をもうかがわせるまさに蔬果図の集大成ともいえる素晴らしい作品たちです。

今回の展覧会では、「描かれた野菜・果物」をテーマに泉屋博古館の所蔵する中世から近代にわたる作品に国内の 名品を加え、日本をはじめとする東アジア絵画の一面に光をあてる展覧会となっています。(泉屋博古館HPより)

展示は、「T蔬果図の源流 草虫画・花卉雑画」、「U新旧の交差点―江戸前期から」、「Vふたりの蔬果図 若冲・呉春」、 「Wその後の蔬果図―江戸後期から近代へ」と進みます。

「T蔬果図の源流」では、蔬果図の二大潮流が華麗で繊細な宋の宮廷画院の画風・院体画で描かれた「草虫図」と水墨と淡彩による文人好みの没骨法などで描かれた 「花卉雑画」であることから、このコーナーでは、まず「草虫画」として、花や蝶などを描いた呂敬甫の作品が展示されています。花は立身出世や富貴などの寓意として 人々に好まれ流行していたとか。

一方「花卉雑画」として、水墨で描かれた《瓜に鼠・蕪に蟹図》や雪村周継の水墨で力強く描かれた《蕪図》が展示されています。

次の「U新旧の交差点―江戸前期から」では様々な草花が咲き乱れる華麗な《四季草花図屏風》に目を奪われるでしょう。 また、中国・明時代の文人のライフスタイルに憧れ、実践する動きが知識層に広がり、絵画でも中国絵画に影響を受けた 南画が登場します。

さてなんといっても今回の展覧会の見所トップは、「Vふたりの蔬果図―若冲・呉春」のコーナーです。

江戸後期、京都で二人の画家が相次いで、長大な蔬果絵巻に取り組みました。ともに新旧の蔬果図をなんらかの形で、 参考にしたと考えられるといわれます。

それはともかく二人の個性的な野菜絵巻の素晴らしいこと!!是非実際に観ていただきたい作品です。

重文《菜蟲譜》を描いた伊藤若冲は、京・錦小路の青物問屋に生まれました。この作品は、晩年に文雅の友のために手がけたとされています。 10m以上の画面に果物、野菜、虫たちが色彩も鮮やかに描かれています。

蔬果の種類は、実に約100種。多くが中国の文人も好んだ吉祥の題材。さらに茗荷やシメジなど身近な食材や ユーモラスな虫たちが描かれているのがユニーク!

一方「蔬菜図巻」の作者、呉春は、四条派の祖で、近代京都画壇の礎となる画家です。与謝蕪村に師事し、 円山応挙の影響を受け、詩情と写実性を兼ね備えた画風といわれています。

この作品は、蔬果図としては珍しく野菜のみ、しかも京都近郊で見られる品種に限定しているというのが驚きです!

淡い色彩、巧みな筆使いで季節の野菜たちの個性を引き出す画力は別格! わさびなどその香りと肌触りを感じるほど。いつまでも観ていたい興味つきない作品たちです。

さて、「Wその後の蔬果図―江戸後期から近代へ」では、本草学の流行により蔬果に植物学的関心が高まり、 画家は絵画資料のみならず、純粋に目前の草木に感動し、つぶさに描こうとするようになります。

このコーナーでは、江戸後期の写生画派の円山応挙(1733−1795)の描いた《筍図》のリアルでありながら典雅な描写を観ることができます。

また、若冲晩年の大作、重要文化財《果蔬涅槃図》を彷彿とさせる富岡鉄斎(1837−1924)の《野菜涅槃図》が初公開されています。 若冲の作品と共に必見!

臨終の二股大根を釈迦にみたてた若冲の構想を借りつつ文人好みの蔬果を淡彩で描いた鉄斎の野菜涅槃図。 二人の野菜涅槃図対決もまた見所です。

さらに小特集のコーナーでは、「描き継がれる墨葡萄」と題し、子孫繁栄、多子長久の象徴として描き継がれた葡萄図の数々が展示され興味深いです。

見所満載の「フルーツ&ベジタブルズ ─ 東アジア蔬果図の系譜」展で中世から近代の日本をはじめとする蔬果図の数々を 堪能したら、2号館ロビーで開催中の若冲と呉春の蔬果絵巻のミニ巻物で絵巻体験、さらに墨絵ならぬ水描き体験するのもおススメです。

また、一茶庵宗家・佃一輝氏による特別展示「蔬果を愛でる−文人の書斎から」もお見逃しなく!

さて、次は、青銅器館で開催中の「中国青銅器の時代」展に向かいましょう。(2018年12月9日[日]まで)

中国古代において、青銅器は、単なる実用品ではなく祀りや儀式に用いられました。そこで用いられる青銅器は、 大切に扱われ、次第に権威を象徴するものと考えられるようになります。

今回の展示は、第1展示室の「青銅器名品選」から第4展示室まで青銅祭器の魅力を様々な角度から紹介していて見応えあります。

受付脇のミュージアムショップでは、展覧会カタログはじめミュージアムグッズが取り揃えられていますので、お立ち寄りになっては?

晩秋の一日、名残の紅葉を楽しみがてら京都・鹿ケ谷の泉屋博古館で開催中の 「フルーツ&ベジタブルズ ─ 東アジア蔬果図の系譜」展(2018年12月9日[日]まで)に いらしてみませんか?

東アジア蔬果図の系譜をたどり、若冲と呉春、江戸後期を代表する画家二人が取り組んだとびきり素晴らしい蔬果絵巻の 競演を楽しむ事ができるでしょう。

あなたはどちらの野菜絵巻が好みですか?

さて、泉屋博古館では、2019年3月2日(土)から5月6日(月・振休)まで「中国文房具と煎茶―清風にふかれて」展が 開催されます。

文人に憧れ、煎茶を愛した住友春翠氏が蒐集された文房具の展覧会です。

春の京都にいらっしゃる折には銀閣寺や南禅寺にも近い泉屋博古館に是非お立ち寄りくださいね。







【赤ちゃん連れのお母様へ】
・泉屋博古館はベビーカーで入館できます。
・ミュージアムの駐車場があります。





このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気 に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せください。 お待ちしております。




泉屋博古館


特別展「フルーツ&ベジタブルズ
―東アジア蔬果図の系譜―」
(2018年12月9日[日]まで)

*TMN Image Archives
《草虫図》 呂敬甫
明・十五世紀
東京国立博物館 所蔵

《蕪図》 雪村周継
室町・16世紀
禅文化研究所 所蔵

重要文化財《菜蟲譜》(部分) 伊藤若冲
江戸・寛政2年(1790)頃
佐野市立吉澤記念美術館 所蔵*巻き替えあり

《蔬菜図巻》(部分) 呉春
江戸・18世紀
 泉屋博古館 所蔵 *巻き替えあり

重要文化財《果蔬涅槃図》
伊藤若冲
江戸 十八世紀
 京都国立博物館 所蔵

《野菜涅槃図 》
富岡鉄斎
明治−大正・二十世紀 個人蔵

2号館ロビーより中庭を望む

青銅器館展示風景

青銅器館展示風景

ミュージアムショップ



 



施設情報

泉屋博古館

住所:京都市左京区鹿ケ谷下宮ノ前町24

TEL:075-771-6411(代)  

★特別展「フルーツ&ベジタブルズ−東アジア蔬果図の系譜−」
開館期間:平成30年11月3日〜12月9日
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日
(月曜日が祝日の場合は開館し、翌平日休館)

入館料:一般 800円/高大生 600円
  中学生 350円/小学生以下無料
★「中国青銅器の時代」
開館期間:平成30年11月3日〜12月9日
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
泉屋博古館をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
泉屋博古館
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