アート&カルチャー

第229回 清澄庭園
Kiyosumi Gardens
東京・江東区清澄



気温のアップダウンが激しい中さくらの季節が始まりました。

地球温暖化の中でのお花見は今後このようになるのでしょうか?

そこで、今回のアート&カルチャーではお花見前の取材につき、 あまり気候に左右されない石が主役の庭園、スケールの大きな近現代の「石庭」をご紹介することにしました。

明治の代表的「回遊式林泉庭園」として名高い都指定名勝「清澄庭園」です。

「回遊式林泉庭園」は泉水、築山、枯山水を主体にした造園手法で、江戸時代の大名庭園に多く用いられたものですが、 明治時代の造園にも受け継がれ清澄庭園によって近代的な完成をみたといわれています。

清澄庭園の土地の一部は、もとは江戸の豪商・紀伊國屋文左衛門の屋敷跡と伝えられ、享保年間(1716〜1735年)に 下総国、関宿藩主久世大和守の下屋敷となり、庭園の原形が存在したとか。

その後、明治11年(1878)三菱グループの創始者岩崎彌太郎が荒廃していた久世大和守の下屋敷跡の土地とその周辺約3万坪を 取得して社員の慰安や貴賓の招待の場として造園を計画、明治13年「深川親睦園」が開園しました。

その後も造園工事は進められ、墨田川の水を引いた大泉水や築山を備え、周囲に全国から集められた名石を配して、 明治の庭園を代表する「回遊式林泉庭園」が概ね完成をみます。

二代目彌之助は兄の遺志を継ぎ武者小路千家一門の磯谷宗庸を招き本格改修を行いました。

また、コンドル設計の洋館や河田小三郎設計の和館を明治22年に竣工し、明治24年に庭園を完成させました。

三代目久彌は明治42年国賓として来日した英国陸軍元帥キッチナーを接待する目的で池の南岸に「涼亭」を建設、接遇しました。

大正12年(1923)関東大震災で大きな被害を被った清澄庭園は、涼亭を残して大半が消失しますが近隣住民の避難場所となり多くの人命が救われたそうです。

そして、大正13年三菱三代目社長岩崎久彌が、庭園東半分を東京市に寄付したことにより昭和7(1932)年「清澄庭園」が開園。 昭和54年(1979)年東京都の名勝に指定され現在に至っています。

ざっと清澄庭園の歴史をご紹介しましたので、早速庭園巡りにでかけましょう。

アクセスは地下鉄都営大江戸線、東京メトロ半蔵門線「清澄白河」駅(A3出口)下車徒歩3分が便利です。 駅A3出口を出ると目の前の清澄通の左手反対側に清澄庭園の緑が見えます。

清澄通を超え、一つ目の角を右折すると左手に清澄庭園の通用門、正門が現れます。

サービスセンターでチケットを購入し入園するとさっそく入口付近の伊豆磯石などの名石たちが出迎えてくれます。

まずは、「大泉水」に向かって進みましょう。清澄庭園の大泉水は三つの中島を配した広い池で、現在は雨水ですが、当初は墨田川から水を引いていましたので、 潮の干満によって池の景観が変化する「潮入りの池」でした。

水面には島や数寄屋造りの「涼亭」、樹々が映され美しい景観を眺めることができます。

次の見所は、「名石」です。岩崎彌太郎の好みで集められた全国の庭石が随所に配置され独特の景観を構成しています。

園内には、景石、敷石、橋、磯渡りの石などの他、無数の石、燈籠、層塔、水鉢などの多彩な石造物などが配置されています。

これらの石は、海運に適した地の理をえて、岩崎家が自社の汽船を使って全国の石の産地から集めたものだそう。

産地は、近畿、四国、東北など様々。入口付近に設置されている伊豆磯石、伊豆川石、伊豆式根島石などなど特に伊豆からの石が目に付きます。

まるで石の展示場のようです。

また、敷石や磯渡りの石などデザイン的にも面白いものが多々あります。

特に「磯渡り」は、池の端に歩けるように石を点々と設置し、池の眺めを堪能できるようにする造作です。歩を進めるごとに変化する景色が楽しめます。 但し、池に落ちないように注意が必要です。

さてこの庭園で最も高く大きな築山が「富士山」。低木を横に配し、雲に見立てているのがデザイン的にモダン。。

また、富士山に向かって右手の「枯滝の石組み」は見事!約3mの紀州青石を鏡石として立てその周囲に同じ青石を据えて滝組みとし、 手前に伊予青石を大小敷き水受けにしています。

伊豆五太郎石は富士川を表し滝壺にも敷かれています。この石組みは庭園全体の構成の上で守護石としてデザインされていると考えられるのだそうです。

園内の自由広場の一角には「古池や・・・」の「芭蕉句碑」も設置されています。

また、園内には石仏群の設置されている一角もあります。富士山の山麓を東側に回り込んだ裏手だそう。深川親睦園当時にあった田舎家前に 設置されていたものだそうなので、ご興味のある方は探してみては?(筆者はみつかりませんでした。)

入口付近に建つ大正記念館は大正天皇の葬儀に使用された葬場殿を移設したものだったそうですが、最初の建物は戦災で焼失したため昭和28年に再建されたものだそうです。 全面改築後現在は集会場として利用されています。、

さすが岩崎家三代が築いた名石の庭!「清澄庭園」は、富士山あり富士川の枯滝ありさながら現代の「石庭」。 見所満載のおススメ庭園です。









【赤ちゃん連れのお母(父)様へ】
清澄庭園はベビーカーで入園できます。 おむつ替えはだれでもトイレが利用できます。


このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、お寄せください。






清澄庭園 エントランス


清澄庭園 案内板


大泉水


磯渡り



富士山


名石:枯滝(石組)


涼亭を望む


名石:真鶴石(まなづるいし)


芭蕉の句碑

大正記念館












施設情報



都指定名勝 清澄庭園

住所:東京都江東区清澄3-3-9

TEL:03-3641-5892(清澄庭園サービスセンター)

開園時間:午前9時〜午後5時(入園は午後4時30分まで)

休園日:年末・年始(12月29日-翌年1月1日まで)


無料公開日:

みどりの日(5月4日)・都民の日(10月1日)

入園料:一般/150円・65才以上/70円
小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料)



詳しくは直接お問い合わせいただくか
清澄庭園をご覧ください。

ダウンロード不可
禁無断転載