アート&カルチャー


第167回 アーティゾン美術館 
Artizon Museum
(東京都中央区)



いよいよ東京オリンピックまであと半年となりました。今年はスポーツ一色の年と思いがちですが、実はアート界隈も 大型美術館のオープンやリニューアルオープンが続き活況です。

昨年9月の大倉集古館に続き、今年(2020年)1月18日、東京駅にほど近い京橋の地で長年充実した展覧会や土曜講座で親しまれていた ブリヂストン美術館が装いもあらたにアーティゾン美術館としてオープンしたのをご存じでしょうか?

1952年に創設された公益財団法人石橋財団ブリヂストン美術館は、2015年5月から建て替えのため長期休館していましたが、 アーティゾン美術館と館名を変更し、新しい美術館として開館しました。

館名の「ARTIZON」(アーティゾン)は、「ART」(アート)と「HORIZON」(ホライゾン:地平)を組み合わせた造語で、 時代を切り拓くアートの地平を多くの方に感じ取っていただきたいという意志が込められているそうです。

また、新しい美術館のコンセプトは「創造の体感」。古代美術、印象派、日本の近世美術、日本近代洋画、20世紀美術、そして 現代美術まで視野を広げています。

美術館施設は、23階建ての高層ビル「ミュージアムタワー京橋」の低層階に位置し、展示室は4−6階の3フロア、 面積はブリヂストン美術館の約2倍に拡張され、最新機能の設備と「日時指定予約制」の入館システムを導入しています。

新しい美術館に興味津々、早速開館初日に取材してきましたのでご紹介しましょう。

アクセスはJR東京駅八重洲中央口から5分が便利。八重洲地下街(八重洲地下2番通り)を通れば、出口の先、中央通りの向こう側にアーティゾン 美術館のファサードが見えます。

ガラスの格子窓が印象的なエントランスより入場し、まずはエスカレーターで3Fのメインロビーに上がり、 ウェブサイトで予め購入した予約チケットのQRコードを提示します。確認できればセキュリティーチェックを受け、 6F展示室に向かいます。館内では、ゲスト用WiFiを通じ無料の音声ガイドが利用できます。また、 非営利かつ私的使用の目的でのみ撮影が可能です。(*撮影禁止の作品を除く)

6Fに到着すると開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」が始まります。(2020年1月18日(土)〜3月31日(火))

休館中も収集活動を続けてきた石橋財団コレクションの65年以上に及ぶ古代から21世紀までのコレクション約2800点の中から 選りすぐった206点から構成される開館記念展です。

展覧会は「創造の体感」をテーマに第1部「アートをひろげる」と第2部 「アートをさぐる」から構成されています。

第1部 「アートをひろげる」では、近代から現代に至る東西の名品を一つの地平に並べ一望。 第2部「アートをさぐる」では、古今東西の美術を7つのテーマで掘り下げます。

それでは、第1部のトップバッター、エドゥアール・マネの《自画像》から観てゆきましょう。そして、1870年代のマネから2000年代の スーラ―ジュまでの約140年間のアートの名作を一つの空間に混在させるという試みを楽しみましょう。

印象派、ポスト印象派、象徴派、ナビ派、フォーヴィスム、キュビスム、抽象美術、ダダイスム、シュルレアリスム、抽象表現主義の名品たちを 一望できるエキサイティングな展覧です。

特にブリヂストン美術館の代表作に加え31点の新収蔵作品は見所です。

ピエール=オーギュスト・ルノワールの名作《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》の隣には、19世紀フランスで活躍した サロン画家アンリ・ファンタン=ラトゥ―ルの新収蔵作品《静物(花・果実・ワイングラスとティーカップ)》が展示されています。

また、メアリー・カサットの《日光浴(浴後)》に並んでギュスターブ・カイユボットの《ピアノを弾く若い男》が展示されるなど印象派の 二人の画家の新収蔵作品が並ぶ展示空間は魅力的!

メアリー・カサット(1844‐1926)は、アメリカの画家・版画家で成人してからはフランスに長く滞在し、ドガやピサロに師事。 後に印象派の展覧会にも出品しました。

独特の力強いタッチ、明るい色彩で母と子の絆をモチーフにした作品を数多く描き、女性の社会進出を支援する活動にもかかわったとか。

また、カイユボットは、ブリヂストン美術館で開催された「カイユボット展 ― 都市の印象派」で注目された印象派のパトロンであり近年 画家としての評価が高まっている作家です。

そして光輝くコンスタンティン・ブランクーシの《ポガニー嬢U》の背後でヴァシリー・カンディンスキーの傑作《自らが輝く》も光を放っています。

カンディンスキーは、抽象絵画の発展に大きな役割を果たした20世紀前半を代表する画家です。絵画を精神活動として見なし、 色彩や線の自律的な運動によるコンポジションの探究に取り組み、ベルリンの分離派展やパリの サロン・ドートンヌ、ドレスデンのブリュッケ展などへの出品を経て、1911年にフランツ・マルクらと「青騎士」を結成しました。

ロシア革命後には祖国の美術行政や教育の要職に就き、1922年にはワイマールの国立バウハウスに加わりました。こちらの作品は、 カンディンスキーがバウハウスに加わって2年後の1924年に制作された作品だとか。

その他ジョルジュ・ブラック《円卓》、フランシス・ピカビア《アニメーション》、マーク・ロスコ《無題》、ウンベルト・ボッチョーニ 《空間における連続性の唯一の形態》、堂本尚郎《集中する力》等々の新収蔵作品も見所です。

たっぷりと第1部「アートをひろげる」を楽しんだら、4Fと5Fで開催されている第2部「アートをさぐる」に向かいましょう。

第2部は@装飾 A古典 B原始 C異界 D聖俗 E記録 F幸福の7つの視点からアートを堀下げています。

5Fでは、@〜Cのテーマで展示されています。

@装飾では、人間の根源にある装飾欲求によって身の回りの器物に文様を装飾した作品が展示。エミール・ガレの器に用いられた文様や アンリ・マティス《石膏のある静物》が見ごたえあります。

A古典では、ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルの《若い女の頭部》やルノワール、セザンヌの裸体画などが見所です。

B原始では、青木繁の神話画などが展示されています。

C異界では、クロード・モネの《睡蓮》やジョルジョ・デ・キリコの《吟遊詩人》などが展示されています。

4Fと5Fの展示室の中央あたりに吹き抜けの空間があり5Fから階下を覗くと4Fの展示作品が上から見える構造になっています。 吹き抜け展示室の効果で、展示室全体に解放感が生まれています。

開放感といえば、4Fと5Fに設置されたビューデッキも快適です。この明るい展望休憩コーナーで次回の展覧会チラシを見ながら 一息つくのもいいかもしれません。

さて、5Fを展覧したら4FでD〜Fをテーマとした展示を楽しみましょう。

D聖俗では、エジプトの彫刻やギリシアの彫刻がゆったりと展示され、日本古来の美術品などを展示するために新設された特別仕様の展示ケースが 設置された展示室では、江戸時代の《洛中洛外図屏風》がしっかりと鑑賞できます。

新設された展示室は壁は光を吸い込む黒漆喰、展示ケースは継ぎ目のない15メートルの1枚ガラスでできています。ガラスの透過度が高いのか、 屏風の細密な絵が鮮明に見えるのがおどろきです。

E記録のコーナーでは、新収蔵品のベルト・モリゾの《バルコニーの女と子ども》が興味深いです。

印象派グループの数少ない女性画家のひとりモリゾは、女性的な感受性で母子や幼児などをモチーフに、 繊細で穏やかな作品を描きました。

この作品は、オスマンのパリ大改造で近代都市へと変貌するパリの景観を背景に、瀟洒な女性と少女の日常のひとこまを こまやかに描いた優品です。

次は、いよいよ最後のセクションです。

F「幸福」では、アーティゾン美術館が今日の姿にいたる転回点となった作品たちを紹介しています。

坂本繁二郎、青木繁、藤島武二、メアリー・カサット、岸田劉生、アンリ・マティス、ラウル・デュフィ、ハンス・ホフマン、 ウィレム・デ・クーニング、エミリー・カーメ・イングワリィ、田中敦子、ピエール・スーラージュ、ザオ・ウーキ―などアーティゾン 美術館の特色ある名品たちです。

さて、開館記念展をたっぷり楽しんだら、4Fのインフォルームに立ち寄ったり、4・5Fのデジタルコレクションウォールを試すのもいいかもしれません。

2Fのミュージアムショップには、展覧会カタログはじめ、オリジナルのミュージアムグッズや高精細複製画、国内外のアートグッズなどが取り揃えられています。

また、展覧会鑑賞後に一息つきたいときには、1Fのミュージアムカフェが利用できます。こだわりのコーヒーや紅茶、ハーブティーなどの ドリンク類、季節の素材を使ったこだわりのお料理がいただけます。

2月の一日JR東京駅からほど近いアーティゾン美術館に足を運んでみませんか?

開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」で、随所にこだわりのある最新の美術館と最新のコレクション展を楽しみ、 新しいアートの波を体感してみてはいかがでしょう。

春休みのお出かけスポットとしてもおすすめです。







【赤ちゃん連れのお母様へ】
・3Fに授乳室が設置されています。
・3Fにおむつ換え用ベッドがあります。




このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
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アーティゾン美術館

6F 開館記念展の展示室入り口
「見えてくる光景 コレクションの現在地」
2020年1月18日(土)ー3月31日(火)

6F 展示風景
第1部「アートをひろげる」

ピエール=オーギュスト・ルノワール
《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》
 1876年
石橋財団アーティゾン美術館蔵

メアリー・カサット
《日光浴(浴後)》 1901年
石橋財団アーティゾン美術館蔵

ヴァシリー・カンディンスキー
《自らが輝く》 1924年
石橋財団アーティゾン美術館蔵

5F・4F 第2部 「アートをさぐる」 展示風景

5F 第2部 「アートをさぐる」 展示風景
左:ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル
《若い女の頭部》 制作年不詳

《洛中洛外図屏風》 左隻 
江戸時代 17世紀
石橋財団アーティゾン美術館蔵

4F 第2部 「アートをさぐる」 展示風景
右:ベルト・モリゾ 《バルコニーの女と子ども》 1872年

ミュージアム・ショップ

ミュージアム・カフェ






施設情報

アーティゾン美術館

住所:東京都中央区京橋1−7−2

TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)

開館時間:
10:00−18:00
*祝日を除く毎週金曜日は20:00まで
*入館は閉館の30分前まで

休館日:
月曜日、展示替え期間、年末年始
*月曜日が祝日の場合は開館し翌平日は振替休日
*休館日が異なる場合があります。

入館料:展覧会により異なりますので各展覧会のウェブサイトをご覧ください。
*学生無料(要予約)中学生以下無料・予約不要

*日時指定予約制* アーティゾン美術館ウェブサイトより来館前に「ウェブ予約チケット」をご購入ください。

【開館記念展 「見えてくる光景 コレクションの現在地 」】
2020年1月18日(土)〜2020年3月31日(火)
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
(毎週金曜日は20:00まで/但し3月20日を除く) 休館日:月曜日(2月24日は開館)、2月25日(火)
*日時指定予約制*

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
アーティゾン美術館 をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
アーティゾン美術館
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