アート&カルチャー


第148回 アサヒビール大山崎山荘美術館
Asahi Beer Oyamazaki Villa Museum of Art
(京都府・大山崎町)



7月に入り夏空が楽しめる季節が目前となりました。

心浮きたつ夏休みももうすぐ!

すでにご旅行の計画を立てていらっしゃる方も多いことでしょう。

今回ご紹介する美術館は、これからバカンスの計画を練るアートやデザインラバーの皆様、関西・東海地域にお住まいの皆様に 特におすすめのとっておきアートスポット。

京都府大山崎町、天王山の南麓、約5500坪に及ぶ自然豊かな庭園の中に静かにたたずむ「アサヒビール大山崎山荘美術館」です。

アサヒビール大山崎山荘美術館
https://www.asahibeer-oyamazaki.com/

「アサヒビール大山崎山荘美術館」は、関西の実業家・加賀正太郎(1888-1954)が、 大正から昭和初期にかけ建設した「大山崎山荘」(登録有形文化財)を創建当時の姿に修復し、 安藤忠雄氏設計の新棟「地中の宝石箱」を加え、1996年4月にオープンしました。

もともとは、週末を過ごす別荘として加賀自ら設計(監修)した粋をこらした「大山崎山荘」。 加賀没後、加賀家の手を離れたこの山荘は、平成のはじめには傷みが激しく荒廃寸前となった上、 周辺が開発の波にさらされたことから地元有志の方を中心に保存運動が展開されました。

加賀が、アサヒビール初代社長・山本爲三郎(1893-1966)と同じ財界人として深い親交のあったこともあり、 京都府や大山崎町から要請をうけたアサヒビール株式会社は、 行政と連携をとりながら、山荘を復元し美術館として再生することとしたそうです。

「アサヒビール大山崎山荘美術館」誕生にはそんなストーリーがあったのです。

「アサヒビール大山崎山荘美術館」では、貴重な建築物や約5500坪に及ぶ自然豊かな庭園を後世に遺すとともに、 美術館としての個性をいかした企画展示など、独自の活動を展開しています。

その所蔵品の中核は、美術館開設に際し寄贈された山本爲三郎コレクション。山本が篤く支援した 河井ェ次郎、濱田庄司、バーナード・リーチなど民藝運動にゆかりの作家たちの作品をはじめ国内外の工芸の名品群です。 さらに印象派の巨匠クロード・モネの《睡蓮》連作などが加わり、美術館収蔵品は約1000件に及びます。

「アサヒビール大山崎山荘美術館」では、年数回の展覧会を開催するとともに民藝運動ゆかりの作家たちの作品を 常設展示しています。

2018年7月16日(月・祝)まで開催されている展覧会が、「ウィリアム・モリス―デザインの軌跡」。

19世紀後半のイギリスで最も傑出した芸術家で思想家のひとり、ウィリアム・モリス(William Morris,1834−96)の生涯と 作品をデザインにフォーカスして紹介する展覧会です。

取材してきましたので、ご紹介しましょう。

「アサヒビール大山崎山荘美術館」は、京都からJR京都線普通電車で約15分、JR京都線「山崎駅」、阪急京都線「大山崎駅」より徒歩約10分と 便利です。(踏切を渡った先に案内表示有)

無料送迎バス(ご高齢の方優先)が運行されていますので、時刻表に合わせて利用されるのがいいかもしれません。(HPに時刻表有)

バスを降りると、前方左手に出現する小さなトンネルが美術館庭園の入口です。

トンネルの向こうには、ゆるやかに傾斜する地形をいかした庭園が拡がり、緑のグラデーションの中、季節の花や建物が次々姿を現します。

道が大きく右にカーブした地点にあるのが、「レストハウス」です。 旧車庫としてチューダー・ゴシック様式で建てられ、現在はロッカーのある無料休憩所となっています。

さらに進むと流水門があり、その先にイギリスチューダー・ゴシック様式に特徴的な木骨を見せるハーフティンバー方式をとり入れた デザインが印象的な本館が姿を現します。

山荘風の玄関を入り受付でチケットを購入、太い梁の下の作りつけのソファと暖炉を横目に早速「ウィリアム・モリス −デザインの軌跡」展に進みましょう。(2018年7月16日(月)まで)

展示室1では、モリスがチャールズ・フォークナーたちとはじめて設立したモリス・マーシャル・フォークナー商会製作の肘掛け椅子や丸椅子また、アーツ・アンド・クラフツ運動を推進する仲間のひとり、陶器装飾の巨匠、ウィリアム・ド・モーガン デザインの美しいタイルや金工デザイナー、ウィリアム・アーサー・ベンソンの優雅なランプなどが展示されています。

展示作品を楽しんだら、展示室1内観デザインも観てみましょう。もと食堂だった室内の窓辺には、造りつけのソファと風格のある柱が 存在感のある一角を形作っています。

また、展示室からテラスに出てみると、蓮池の先に広がる景観を楽しむことができます。 遠く山の緑を背景に加賀が山荘建設の指揮をとるために敷地内に最初に建てられた「栖霞楼」をのぞむことができます。

さて、次に加賀の趣味とした蘭を栽培するかつての温室へ続く通路を通り、「夢の箱」(山手館)へ向かいましょう。

この館では、モリスデザインの壁紙や壁掛け、内装用ファブリックなどを観ることができます。

まず初めに展示されているのが、モリスのデザインした最初の壁紙《格子垣(白)》格子をよじのぼる薔薇に鳥たちが集まる 魅力的なデザイン。モリスが妻ジェインとの新婚生活をおくる新居として建てられた今も現存する「レッド・ハウス」の庭から 想起されたといわれています。

様々なデザインの手刷りの壁紙の次のコーナーでは、ジョン・ヘンリー・ダールデザインの刺繍壁掛け《リスとナイチンゲール》に魅了されるでしょう。

シルク・ダマスク織りにかわいいリスとナイチンゲールがシルクとサテンで刺繍されたモリス商会制作の豪華な作品です。

さて、1881年モリスは、マートン・アビーに大規模工房を開設します。ここでは、タペストリー、カーペット、捺染、織物、ステンドグラスの工房が 開設されました。

ここで制作されたのが、染色作品《いちご泥棒》。インディゴ染め抜きの藍色に鮮やかに赤や黄色が重ねられ、 工程全体の完了には数日を要する複雑な作業を必要とする名品です。

今回の展覧会の広報、宣伝でも多く露出しているデザイン。モリスのデザイン、モリス商会製作の内装用ファブリックです。

一角にはウォルター・クレインなど仲間の壁紙作品も展示されていてモリスの交友関係の幅広さがうかがえます。

さて次は、本館へ戻り、山本記念展示室で展示されている理想的な書物をつくるプライべート・プレス(私設印刷工房) 「ケルムスコット・プレス」を紹介する展示に向かいましょう。

1891年に創設した「ケルムスコット・プレス」は、商業印刷には実現不可能な印刷と書物の芸術を追及する人々の私設印刷工房。

その後各地に設立されるようになるのですが、モリスはそのもっとも重要な先駆けとなったそう。

この展示室では、ウィリアム・モリス『ケルムスコット・プレス設立趣意書』 やウィリアムモリス『世界のかなたの森』、トマス・モア『ユートピア』、ウォルター・クレイン『花のファンタジー 古き イングランドの庭にて』などの貴重な書籍をみることができます。

さて、元居間であった山本記念展示室には暖炉があり、その上部にはめ込まれた画像石は後漢時代の墓で使用されていた石で、 贅を尽したデザイン。また、特殊な色ガラスがはめこまれていたり、暖炉上部の木彫など見所満載!

続く応接間も壁面は、高級石材である龍山石、床や窓下は大理石で仕上げられるという贅沢な内装となっています。

企画展「「ウィリアム・モリス―デザインの軌跡」を、壁紙、テキスタイル、椅子、出版物等主要なモリス作品と、 同時代のデザイナーたちによる作品を合わせた56点を通して楽しんだら今度は、建築家・安藤忠雄氏設計による新棟「地中館」に向かいましょう。

安藤氏により「地中の宝石箱」と名づけられた地中館は、周囲の景観との調和をはかるため半地下構造で設計され、 円柱形の展示空間上部には植栽がほどこされています。 地中館と本館を結ぶ通路はコンクリート打放しで造られ、本館を出て両側を高い壁に囲まれた階段を下るとたどり着きます。

展示室では、印象派の巨匠クロード・モネの《睡蓮》連作が常設展示されています。

さて、最後に本館のステンドグラスがはめ込まれ、木彫の手摺が美しい階段を上がり、2F展示室3で常設展示されている河合ェ次郎、濱田庄司、バーナード・リーチなどの 作品を鑑賞していきましょう。 また、奥には来客用の当時の先端的バスルームも展示されていますので、覗いてみるのもいいかもしれません。

また、2F階段ホールでは、チューダーゴシック風建築様式の梁と木を見せた美しい小屋組みの天井を 観ることができます。

ほっと一息つきたい時は、本館2F喫茶室がおすすめです。 大テラスからは、桂川・宇治川・木津川を眼下に男山など緑いっぱいの眺望を楽しむことができます。

この日は、関連イベント、リーガロイヤルホテル京都考案の特製オリジナルスイーツ「バラとクランベリーのケーキ」 と紅茶でしばし旅の疲れを癒しました。

1F玄関ホールのミュージアムショップには、展覧会関連書籍をはじめ美術館オリジナルグッズなどが取り揃えられていますので、 お立ち寄りになっては?

7月の一日京都府大山崎町、天王山の緑豊かな南麓に佇む「アサヒビール大山崎山荘美術館」にいらしてみませんか?

開催中の企画展「ウィリアム・モリス―デザインの軌跡」(7月16日まで)をはじめ展覧会と呼応するように細部にもこだわりのある珠玉の美術館本館建物、 常設展示、庭園などを楽しみ素敵な時間を過ごすことができるでしょう。

美しいデザインと美しい自然に囲まれ美意識がみがかれるかもしれません。

また、2018年7月28日(土)から2018年9月2日(日)まで開催される「サム・フランシスの色彩 −夏のアサヒビール大山崎山荘美術館コレクション」に お出かけになるのもおすすめです。(7月17日〜27日は休館)

尚、館内は一切撮影禁止ですので、ご注意くださいね!





【赤ちゃん連れのお母様へ】
・アサヒビール大山崎山荘美術館は階段が多いためベビーカーは受付にお預けください。
・オムツ替えは、1Fの多目的トイレにオムツ替えシートが設置されています。






このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
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アサヒビール大山崎山荘美術館

庭園入口(トンネル)

レストハウス

玄関

展示室1
「ウィリアム・モリス −デザインの軌跡」展示風景

展示室1 テラス

「夢の箱」(山手館)
「ウィリアム・モリス −デザインの軌跡」展示風景

ウィリアム・モリス
《いちご泥棒》
1883
photo© Brain Trust Inc.

山本記念展示室
「ウィリアム・モリス −デザインの軌跡」展示風景


ウィリアム・モリス
『ケルムスコット・プレス設立趣意書』
1898
photo© Brain Trust Inc.

「地中の宝石箱」(地中館)

地中館常設展示風景

ミュージアムショップ

喫茶



 



施設情報

アサヒビール大山崎山荘美術館

住所:京都府乙訓郡大山崎町大山崎銭原5-3

TEL:075-957-3123 

開館時間:
午前10時〜午後5時 ※入館は午後4時30分まで。

休館日:月曜日
(祝日の場合は翌火曜 ただし2018年11月19日、26日、12月17日は開館) 臨時休館、年末年始
・2018年の休館日 ※変更の可能性があります

入館料:一般/900円、高・大学生/500円
中学生以下/無料
障害者手帳をお持ちの方/300円

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
アサヒビール大山崎山荘美術館  をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
アサヒビール大山崎山荘美術館

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