アート&カルチャー


第172回 たましん美術館 
Tamashin Art Museum
(東京都立川市)



7月、新型コロナウイルス感染防止の自粛要請が全面的に解除されました。

しかし、解放感は多少出てきたもののウィズコロナの新しいライフスタイルを意識しながらの生活は微妙です。

冬に来るであろう第2波、第3波に備えつつリモートワークなど生活のニューノーマルに徐々に適応している方が 多いかもしれませんね。

そこで、今回は、美術館でのアート鑑賞のニューノーマル第一弾として、東京の西の郊外、立川市に今年(2020年)6月2日にオープンした ばかりの「たましん美術館」を取材してきましたのでご紹介しましょう。

広大な国営昭和記念公園に隣接し、JR立川駅の北に位置する新街区GREEN SPRINGS(グリーン・スプリングス)の玄関口に開館した 「たましん美術館」は、多摩信用金庫本店・本部棟の新築にともない誕生した新しい美術館です。

多摩信用金庫(たましん)は、1974年(昭和49)に立川市の本店ビル新築にともない「たましん展示室」を開設以来、多摩地域の文化・芸術の振興に 貢献することをミッションとしてさまざまな文化事業を実施してきました。

以前このコーナーでご紹介した「たましん歴史・美術館」やその分館「たましん御岳美術館」(令和元年9月閉館)では 近代日本の著名な作家の作品や多摩地域で活躍する作家の作品を、また、「たましんギャラリー」(令和元年9月閉館)では、 地域の作家の作品の展覧会を開催してきました。

そして今回、地域金融機関としては、他に例のない優れた美術作品のコレクションやこれまで培ってきた様々な芸術文化活動が、 「たましん美術館」として結実したのです。

「たましん美術館」のオープンを記念して現在開催されているのが、「開館記念展Tたまびらき―たましんの日本近代美術コレクション―」。 (2020年6月2日〜8月5日/前期:〜7月5日(日)、後期:7月11日(土)〜8月23日(日))。

たましんコレクションの中から選りすぐった日本近代(明治、大正、昭和)の洋画・彫刻の名品が展示されている展覧会です。 早速取材してきましたのでご紹介しましょう。

アクセスはJR中央線・立川駅より徒歩約8分、多摩都市モノレール・立川北駅より徒歩約4分と便利。

心と体、そして社会が心地よい状態を理想とするライフスタイル「WELL-BEING(ウェルビーイング)」をコンセプトに、 1万平方メートルの広大な広場を中心に、商業施設、オフィス、ホテル、ホールが立ち並んだ新街区GREEN SPRINGSの玄関口に位置する 多摩信用金庫の新本店・本部棟建物内1階に「たましん美術館」はあります。

入り口を入ると早速巨大なオブジェが出迎えてくれます。

入館の際はまずマスク着用、手をアルコール消毒、次に受付で検温、OKならば、チケットを自動販売機で購入し、再度受付で ナンバーの入った入館証を受け取り(館内が密にならないよう入館者数を受付で把握するため) 、鮮やかな青の壁が印象的なエントランスに向かいます。 入り口を入ると、自動改札がありますので、チケットをかざして入館となります。

さて、展示は「近代洋画事はじめ・明治美術会から太平洋画会へ」、「新たなる潮流・白馬会から光風会へ」、 「新宿で生まれた文化人グループ・中村屋サロン」、「アカデミズムからの脱却・白樺派、草土社」、「在野からの挑戦状・二科会、独立美術協会」、 「独立独歩・我が道を歩んだ画家たち」の6つのテーマから構成されています。

早速順路に従って、ソーシャル・ディスタンスを意識しながら作品鑑賞を始めましょう。

まず目に飛び込んでくるのが、浅井忠(1856‐1907)の印象派の影響を感じさせる《収穫》です。

佐倉藩士の長男として生まれた浅井は、工部学校で、アントニオ・フォンタネージに師事し、1889年小山正太郎らと明治最初の洋画団体 明治美術会を創立しました。

この作品は浅井の代表作の一つです。

続く「新たなる潮流・白馬会から光風会へ」では、モダン美人画で知られた岡田三郎助(1869‐1879)の「水辺の柳」が魅力的です。 水辺の柳を岩彩や金彩といった日本画の画材を油彩と併用して描いた雰囲気のある作品。

佐賀藩士の家に生まれ、旧藩主邸で見た絵から洋画家の道を志した岡田は、黒田清輝、久米桂一郎が指導する天真道場に入門、 1896年黒田らと白馬会を創立、後パリに5年間留学し、ラファエル・コランに師事。ヨーロッパの鮮明な外光表現を持ち帰りました。

次の「アカデミズムからの脱却・白樺派、草土社」と題するコーナーでは、アカデミズムによらず個性の表出を重視した白樺派や草土社の 画家たちを紹介しています。ここでは、岸田劉生(1891-1929)の《初冬の田畑》が見どころ。

岸田は白馬会の葵橋洋画研究所で洋画を学び、1911、12年頃から武者小路実篤ら白樺派同人と親交を結び、1912年斎藤与理と ヒュウザン会(翌年フュウザン会と改称)を結成、1915年草土社を創立しました。

さて、「新宿で生まれた文化人グループ・中村屋サロン」のコーナーでは、様々な才能豊かな作家たちが切磋琢磨したサロンに参加した 萩原守衛(碌山)や高村光太郎(1883-1956)、中原悌二郎(1888-1921)のブロンズ作品 、中村彝(1887-1929)の特色ある油彩作品(前期)を観ることができます。

次は、「在野からの挑戦状・二科会、独立美術協会」と題し、より挑戦的な作風を発表するために官展から脱却して生まれた二科会や独立美術協会 などの作家たちの作品が展示されています。

中でも安井曾太郎(1888-1955)の「裸婦」は斬新です。京都に生まれた安井は洋画家を志し、はじめ浅井忠に師事しました。

1907年渡仏し、パリのアカデミージュリアンのジャン・ポール・ローランスに師事し、西洋絵画の基本を学びました。1914年帰国し、 第2回二科展に渡欧作を発表し、会員に推挙されましたが、その後脱会し、一水会を創立しました。

最後のコーナーでは、「独立独歩・我が道を歩んだ画家たち」と題し、どこにも属さない独自性を追い求めた作家たちの個性豊かな作品が 展示されています。

藤田嗣治の《猫二匹》、岡鹿之助の《村の一隅》、熊谷守一の《蟻》と《鬼百合》など魅力的な作品を観ることができます。

こうしてコロナ自粛明けの久々の美術鑑賞は、「開館記念展Tたまびらき―たましんの日本近代美術コレクション―」の前期展覧会を最新の 美術館施設で快適に堪能し大満足しました。

前期は7月5日までですので、前期展示作品をご覧になる場合はお早めに。そして、日本近代美術史の豊かな流れを素晴らしい「たましんコレクション」 で存分に楽しみたい方は、ぜひ後期(7月11日〜8月23日)もお出かけください。

後期には、ブロンズ作品を除き全作品入れ替わり、同じテーマのもと武者小路実篤の《卓上の静物》、児島善三郎の《盛夏》などさまざまな作品を観ることができます。

夏休みのおでかけスポットとしてもおススメです。

また今年の秋には、充実の「たましんコレクション」の二つ目の柱、中国・朝鮮・日本の古陶磁の優品を展覧する 「開館記念展U東洋古陶磁展―コレクションでたどる東洋のこころー」が開催予定です。(2020年9月5日[土]〜11月15日[日])

国営昭和記念公園の秋を楽しみがてらお出かけになってはいかがでしょう。

さらに、たましん本店2階の一角には、多摩産材の柱で構成された内装も美しい「地域貢献スペース(ギャラリー)」が設置され、だれもが 気軽にアートを味わうことができるギャラリー展示が開催されています。

オープニングを飾るのは、武蔵野美術大学の版画研究室によるグラフィック・アート。
「MAU Graphic-Arts Exhibition」(〜2020年7月11日(日)・ 7時〜22時)

お立ち寄りになっては?若いアーティストたちの瑞々しい感性に出会うことができるでしょう。

また、1階受付横には、ミュージアムショップがあり、展覧会関連書籍、ミュージアムグッズなどが取り揃えられています。



【赤ちゃん連れのお母様へ】
・おむつ替え等は、スペースのご用意があるそうですので受付にご相談ください。










このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せください。 お待ちしております。



 

たましん美術館

たましん美術館・エントランス

開館記念展Tたまびらき
―たましんの日本近代美術コレクション ―

浅井忠 《収穫》 1890年頃
【前期展示】

岸田劉生 《初冬の田畑》 1913年
【前期展示】

高村光太郎 《手》 1918年
【前期・後期展示】

安井曽太郎 《裸婦》 1930年
【前期展示】

武者小路実篤 《卓上の静物》 1962年
【後期展示】

児島善三郎 《盛夏》 1958年頃
【後期展示】

地域貢献スペース(ギャラリー)




施設情報



たましん美術館

住所:東京都立川市緑町3−4
「GREEN SPRINGS」内多摩信用金庫本店1F

TEL:042-574-1360(たましん地域文化財団)

開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)

休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)
    年末年始・展示替期間
    ※開館時間・休館日は変更になることがあります。

入館料:一般/500円、高校生・大学生/300円、(中学生以下無料)
※展覧会によって入館料が異なる場合があります

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
たましん美術館をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
公益財団法人たましん地域文化財団
ダウンロード不可
禁無断転載