特集: flânerie(そぞろ歩き)

<四季折々の京都>

第25回 嵐山 大河内山荘庭園

燃えるような紅葉に染まる、京都に特別な季節がやってきました。

紅葉の名所には人があふれますが、意外にもその傍らに穴場もあるのです。

今回ご紹介するのは、京都の西・嵐山に位置する天龍寺裏手にある大河内山荘庭園(国指定文化財)。 桂川にかかる渡月橋あたりの喧騒から離れ、静かにそぞろ歩ける庭園です。


<大河内山荘庭園入口>
天龍寺の裏門を出ると嵯峨野の竹林が広がっています。この竹林の径は、野宮神社から大河内山荘間の 約200メートルにわたって続く風情のある小径。


<竹林の小径>
天龍寺のすばらしい庭園を散策した後、北門から出て左手、大河内山荘に向かって歩かれるのがお勧め! 最近のアジア系団体旅行客の多さには驚きますが。


<天龍寺>
さて、大河内山荘庭園は、百人一首で有名な小倉山の南面にある時代劇の名優大河内傅次郎(1898-1962)が、昭和6年(34歳)から 64歳で亡くなるまでの30年間にわたって丹精こめて創りあげた庭園です。
 

<中門>
庭は、回遊式借景庭園で、数多くの松や桜、楓などが植栽され、大乗閣からは朝夕さまざまに変化する嵐山や 比叡山を仰ぎみることができるよう設計されています。
 


大乗閣(登録有形文化財)は、寝殿造、書院造、数寄屋造など日本の住宅の伝統的様式を合わせ取り入れた優雅な建物。 傳次郎の構想に基づき数寄屋師の笛吹嘉一郎が施工したとか。
 

<大乗閣>
前庭には、芝が植えられ、周囲にはモミジ、サクラ、マツなどの高木が植えられた明るく開放的な空間となっています。

至る所、徒然草にゆかりの双々丘につらなる風光明媚な景観が楽しめるよう工夫をこらし作庭されていて、最初は荒地だったとはとても 想像できません。
 


所どころに石仏なども配され、歩くほどに趣きある風情。植木屋の広瀬利兵衛とともに、広大な敷地に様々な木を植え、石を据えて、 亡くなるまで作庭を続けた汗の結晶なのでしょう。
 

<持仏堂>
持仏堂は、信仰の篤い傳次郎が座禅を行った所で山荘の初期の建物。白砂が敷かれ低いマツが植えられた中に佇んでいます。
 

<滴水庵>
次に現れるのが、一面にコケが敷き詰められ、落ち着いた空間の中に建てられた茶室「滴水庵」です。
 

「大河内傅次郎資料館」
出口近くに、「大河内傅次郎資料館」があり、当たり役・丹下左膳姿の写真など傅次郎の映画関係資料やこの庭の作庭経過などが 展示されています。
 


また、入口近くの茶店では抹茶とお茶菓子のサービスがあり、ほっと一息つくことができます。

DATA
大河内山荘庭園
京都市京都府京都市右京区嵯峨小倉山田淵山町
TEL:075-872-2233
京福電鉄嵐山本線 嵐山駅 徒歩20分
嵯峨野観光鉄道嵯峨野観光線 トロッコ嵐山駅下車すぐ
アクセスは、JR京都駅より市バス 206系統・100系統。