特集:「My favorite parks 」
【14】カイルモア修道院(城)と
ヴィクトリアンウォールドガーデン
Kylemore Abbey(castle) and
Victorian Walled Garden
前回のジャイアンツ・コーズウェイから旅を続けアイルランドの西側コマネラ地方の
カイルモア城(修道院)を訪れました。
<カイルモア城の全景>
19世紀半ば英国人の大富豪ミッチェル・ヘンリーはハニームーンに以前から釣りや狩猟に
訪れていたカイルモアの地を選びました。その後、手つかずの自然に魅了された妻マーガレットの為に
15,000エーカーの土地を購入し、氷河の移動でできたU字渓谷の湖のほとり4年がかりで30万本の植林をし、
美しい城を建て、泥炭地を素晴らしい庭園に変え彼女に贈りました。
<城の壁にかけられた絵の中から大きな目で私たちを見下ろすマーガレット>
城から1.6km離れた場所に位置するレンガと石灰石の高い塀に囲まれたヴィクトリア朝様式のウォールド ガーデンの中には芝生と花々による装飾庭園や野草園、野菜園があり、特に独自の暖房設備を整えた 21棟ものガラスハウスでは家族の為に熱帯の野菜や花が栽培されていました。
<ウォールド ガーデンの入り口>
9人の子供に恵まれた夫妻の幸福はマーガレットの突然の死で終わりましたがミッチェルは地域
の人々のために道路整備や学校を作るなど様々な尽力を惜しみませんでした。
この城は、その後何度か転売され、現在のベネディクト女子修道会の所有となりました。
その後インターナショナルスクールを開校し日本を含む世界からの子女を教育していましたが、
2010年に閉校したそうで、160年にわたるこの城にまつわる逸話は小説のようです。
ウォールド ガーデンは領地内で太陽に恵まれ明るく暖かい場所だそうで、広い庭園内には花を
楽しむ装飾花壇、リボン花壇、草本花壇と山草園、キッチンガーデン、ガラスハウスなどがあり、
山のせせらぎや散歩道などで上手に区分けされています。
<ヴィクトリアン ウォールド ガーデン>
<草本花壇を抜ける散歩道>
<キッチンガーデン>
この収穫野菜は、付属レストランで出されるの修道会レシピの献立に使うそうです。
アイルランドは極北の地でありながらメキシコ湾流がもたらす湿潤な気候で年間を通じて平均
気温5〜18℃と寒暖の差が少なく、穏やかで頻繁に雨が降ることから草花が長持ちするのだそうです。
確かに秋なのに日本の春・夏・秋の花々が一緒に咲いているのが不思議でした。
<秋色アジサイ>
<百合>
<フクシアはアイルランドの路傍の花>
<リボン花壇と壁際の果樹>
<クラブアップルの実でしょうか?>
装飾花壇はに日本ではあまり見かけませんが、全体を見渡すと芝生の緑に色とりどりの刺繍をし したように見えます。レンガの壁に果樹をはわせその前にリボン状に植えられた花々の美しい こと!どれも手のかかる仕事でしょうが現在は主任庭師と7人の庭師が働いているそうです。
<装飾庭園>
<主任庭師の家>
ところで壮観で美しかった21棟のガラスハウスはガラス部分が崩壊し現在は土台だけが 残っています。そして近年2棟が修復され熱帯植物と苗物用に使われています。
<修復されたガラスハウス>
この素晴らしい城と庭園とを維持するために種々の試みがなされ後援者を募っているそうです。
ミシェル・ヘンリーは1910年に84歳で英国で亡くなりましたが、彼の妻の眠るカイルモア城の
小さな霊廟に仲良く一緒に眠っているそうです。