My Favorite Travels And Places
(私の好きな旅と場所)

13.グランド・シャルトリューズ修道院
(Monastera de La Grand Chartreuse)


【はじめに】

今回は、フランス東南部ローヌ・アルプス地域圏イゼール県のシャルトリューズ山地(Las Chartreuse montagnes) のほぼ中央に位置する グランド・シャルトリューズ修道院 (Monastera de La Grand Chartreuse)を訪ねます。

修道院は、シャルトリューズ山地全域をほぼその範囲とする、シャルトリューズ地方自然公園(Parc Naturel Regional de Chartreuse)の主峰グラン・ソム(Grand Som :2026m)の麓にひっそりとたたずんでいます。

グルノーブル(Grenoble)からは、車で1時間ほど、ヴォワロン(Voiron)とシャンベリー(Chambery)からは1時間30分ほどの距離にあります。

いずれの街からも、ようやく車がすれ違える山道をサン・ピエール・シャルトリューズ村(St.Pierre de Chartreuse)への道標をたどれば、村からは約10分ほどで修道院の駐車場につきます。


<シャルトリューズ博物館>




駐車場から修道院までは、約2Kmですが車両の乗り入れが禁止されているため、ここからはさらに山道を約40分徒歩で向かうことになります。

【グランド・シャルトリューズ修道院】

グランド・シャルトリューズ修道院は、フランス.カトリック会派のカルトジィオ会派の母修道院です。

創設は、グルノーブル司教の聖シャトーヌフ(Saint Chateauneuf )のユーグ(Hugues:1053-1132年)が、1084年にドイツのライム(Raim)大学で教鞭をとり聖職者でもあった聖ブルーノ(Saint Bruno:1030-1101年)と6人の仲間に、新しい宗教活動を行うためにグランド・シャルトリューズにすでにあった建物や施設を提供したことに始まります。

聖ブルーノ達は、この地で教会や修道院を建設し、現在も厳格に戒律が守られていることで知られているカルトジィオ会派を創始します。

そして、戒律により誓願をたてた修道士達は、社会と隔絶された修道院と関係する教会等の限られた施設の中で生涯をすごします。

現在も修道士達への面会が禁止されていて、私達が修道院を見学することも認めてられていません。

しかし、駐車場にほど近いグランド・シャルトリューズ修道院博物館(Musee de la Grand Chartreuse) を見学することが出来ます。

博物館は、かつて教会と修道院として使われていた建物と施設を活かし、修道院の歴史や活動に修道士達の生活を、見学順路にそってイヤーホーンガイドの案内とパネルやビデオ等により立体的に展示されています。

<グランド・シャルトリューズ修道院への並木道>




【リキュールの女王 シャルトリューズ】

銘酒“シャルトリューズ”をごぞんじの方も多いことと思いますが、この修道院で1605年にその製法が考案され、不老長寿と万病に効く霊薬“シャルトリューズ”が1787年から本格的に醸造されています、そしてかつての醸造工程が再現された模型やジオラマなどが展示されています。

現在この霊薬“シャルトリューズ”は、1970年以降 ヴォワロン市内の民間酒造工場で委託醸造され“リキュールの女王”として世界中に輸出されています。

しかし、ブランディーにアンゼリカ(西洋トウキ).クローブ(丁子).コリアンダー等130種類の薬草を5回浸漬させ4回の蒸留をかさねることのほかは、薬草の調合などグランド・シャルトリューズ修道院の3人の修道士にのみに口伝で引き継がれる秘伝とされています。

<“リキュールの女王” シャルトリューズ>


日本には、明治時代に薬として薬問屋を通し輸入されてもいます。

2時間ほどの博物館の見学を終え、その先は車両乗り入れが禁止されることから徒歩で山道を40分ほど登ると修道院の正門にたどりつきます。

さらに30分ほど山道を登ると、グランド・シャルトリューズ修道院が全望出来る山の頂にたたずむことが出来ます。


<グランド・シャルトリューズ修道院>




<頂の十字架>


【静寂の谷間】

修道院の見学が認められていない私達は、この頂からしばし修道院をながめ、修道士達の生活や生涯に思いをはせ、一時をすごします。

ここは、静寂さがただようシャルトリューズの谷間に、厳しさと心洗われる清浄感に満ちた景観を望むことができる、私の好きな場所でもあります。

【参考図書.他】

・「Chartreuse Tourisme」Chartreuse Tourist office (2008年)
・「Musee de la Grand Chartreuse」Musee-Grand- Chartreuse office (2008年)
・「Grenoble」Florence Lelong/Jean Louis Larocbe: sur Ies presses (2006年)





【作者プロフィール】
相馬正弘(そうままさひろ)
・京都市出身
・設計事務所を開設し、地域計画.都市計画.公園計画を中心に活動中
・大学の講師として後進の指導も
・趣味は、旅行.テニス

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ケータイ・サプリwebマガジンのための書き下ろしです。
使用されている写真の著作権は相馬正弘さんと記載されている方にあります。