My Favorite Travels And Places
(私の好きな旅と場所)

43.常夏の楽園いやしの風が吹くハワイ
その8. 古代ハワイの土地利用制度

【はじめに】

今回は、これまでに訪ねたハワイ島のプウホコラ.ヘイアウ(Puukohola Heiau)やプウホヌア.オ.ホナウナウ国立歴史公園(Puuhonuua O Honaunau National Historic Park)のハワイを代表する史跡の歴史を通し、古代ハワイの土地利用制度について考えてみます。

古代ハワイでは12世紀ごろから人口が増加し、明確な階級制度が確立され、時を同じくして土地利用区分制度が形成されます。

<ハワイ諸島>



【古代ハワイの土地利用区分】

古代ハワイの土地利用は、次の通り五つに区分されています。

・アウプ二(Aupuni)
アウプ二は、古代ハワイ土地利用区分の最大単位でハワイ諸島全域を範囲としています。

・モクプニ(Mokupuni)
モクプニは、主要4島のカウアイ島(Kouai Is.).オアフ島(Oahu Is.).マウイ島(Maui Is.).ハワイ島(Hawaii Is.)としています。

・モク(Moku)
モクは、主要4島に近接するカウアイ島に属するニイハウ島(Niihau Is.).マウイ島に属するラナイ島(Lanai Is.)カホオラヴェ島(Kahoolave Is.)にモロカイ島(Molokai Is.)としています。

・アフプアア(Ahupuaa)
アフプアアは、古代ハワイ土地利用区分の基本単位とされ一つの集落(生活共同体)の生活が自活する為に必要な生産.消費.再生産が可能な環境と土地の範囲としています。

概ね山の頂から左右に延びる稜線に、谷筋の湧水や川が海岸にいたる範囲を包括していきます。
・泉.川(飲み水.灌漑用水)
・低地.農耕地(タロ芋の栽培や家畜.家禽の飼育農地)
・山.樹林(住居や舟に生活道具を造るための木材供給)
・原野(神にささげる草花や食料等の調達)
・海(魚や塩等の供給)
からなり、一集落(生活共同体)の規模や土地の立地や特性により、 その面積は約40-400haで構成されています。

アフプアアは、山の幸と海の幸を無駄なく有効かつ効果的に利用した生態的で自然とも共存する土地利用の仕組みでもあると言えます。


<古代オアフ島のアフプアア(Ahupuaa)区分>
「Life in Early Hawaii The Ahupuaa」Kamehameha school press:1994年9月



<オアフ島ホノルル市>

・イリアイナ(Iriaina)
イリアイナは、古代ハワイ土地利用区分の最小単位とされ、一家族が生活を行うのに必要な限られた土地を範囲としています。



<イリアイナの農園>
オヒアの木で組まれた瓢箪棚-プウホヌア.オ.ホナウナウ国立歴史公園の復元農園-



【現在に継承される古代ハワイの土地利用区分】

古代ハワイの土地利用区分のモクプ二とモクは、現在のハワイ州行政区分4郡(County)の基礎となっています。

・カウアイ郡    :カウアイ島.二イハウ島
・マウイ郡     :マウイ島.ラナイ島.モロカイ島
・ホノルル市郡  :オアフ島.北西ハワイ諸島
・ハワイ郡     :ハワイ島

アフプアアは、時代の発展とともに経済圏.交通圏の拡大や生活形態などの変化によりその領域に変化がみられますが、現在の地区(District)にほぼ相関しています。

モクプ二やモクにアフプアアの古代ハワイの土地利用区分は、今日の土地利用区分に継承もされています。

ちなみにハワイ島では、次の6アフプアアに区分されています。

・コハラ(Kohara)
・ハマクアア(Hamakua)
・ヒロ(Hiro)
・プナ(Puna)
・カウー(kau)
・コナ(Kona)


<古代ハワイの土地利用形態をとどめるワイピオ渓谷>



【ハワイのアイデンティティーとしての土地利用区分】

古代ハワイには土地所有概念がなく、1795年カメハメハ1世(KamehamehaT:1758-1819年)がハワイ諸島の統一を図る以前は、土地利用区分に相関し土地の経営と管理を行うアイリ.アイ.モクプ二(Alii ai Mokupuni)・アイリ.アイ.モク(Alii aiMoku)・アイリ.アイ. アプフアア(Alii ai Ahupuaa)とよばれそれぞれの統治者により土地の維持.管理がされ継承されていました。

この土地利用制度は、ハワイの人々にとって今日の伝統的生活共同体に由来するハワイの統合性と独自の文化を育むアイデンティティー(Identity)の象徴となっていると言って過言ではありません。

古代ハワイで築かれた生態的で自然とも共生、共存する土地利用概念と価値観を今日まで継承するハワイは、私の好きな場所でもあります。





【参考文献.資料.他】
・「ハワイさまよえる楽園」中嶋弓子 1993年 東京書籍
・「ハワイ先住民の伝統的生活空間(アフプアア)」 山中速人 1999年
  コミュニケーション科学
・「Life in Early Hawaii The Ahupuaa」 Kamehameha school press
(Hawaiian Studies Institute Staff)1994年9月
・「Legacy of the Landscape」 Univercity of Hawaii puress 1996. 10 Patrick Vinton Kirch . Therese I. Babineau著










【作者プロフィール】
相馬正弘(そうままさひろ)
・京都市出身
・設計事務所を開設し、地域計画.都市計画.公園計画を中心に活動中
・大学の講師として後進の指導も
・趣味は、旅行.テニス

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ケータイ・サプリwebマガジンのための書き下ろしです。
使用されている写真の著作権は相馬正弘さんと記載されている方にあります。